「俺は、あんたが俺と会ってくれるだけでいいぐらいなんや。それ以上のことをあんたが許してくれたら、それは幸せやけど、あんたが許してくれないことを一生しないままであっても、あんたと付き合い続けるつもりではあるんや。

でも、もしあんたが、しても平気なことがあるなら、それをしてほしいし、させてほしい。俺は男やから結局、気持ちよくなるのが目的なら後から一人で気持ちよくなればいいだけの話で、あんたに苦しい思いをさせながら自分だけが気持ちよくなるなんて非道な話やと思ってるんやで」

「あなたにそんな我慢をさせていたら、私が非道だと言われるのでしょう?」

「誰から言われるんや? 俺がいいと言ってるんやから、それでいいはずや。他の人に知られなければいい。あんたと付き合ってるのは俺以外の誰かではなくて、俺なんやから」

「後からっていうのは、私以外の誰かとっていうこと?」

「違う。そうではない。あんた以外の誰かと何かをするわけではないんや。そこは信じてもらうしかない」

嘘を言っているようには見えなかった。けれど、私には、そんなことがありうるのかどうか分からない。私が彼に性的な行為を許さずにいて、彼がずっと私に付き合ってくれるなんて、はたして本当なのだろうか。

よっぽど変わった人なのに違いない。

変な人だと思う。

前に会ったときには、もっとすごいことをしていたのに。

「そうだった。下着を返さなきゃ」

私は自分のカバンの中から、洗濯して紙袋に入れた彼の下着を取り出して、手渡した。

彼は椅子に座ったまま受け取って、中身を確認したりはせずに、紙袋を両手で持った。

「捨ててなかったんやな」

「当たり前では?」

私はまばたきをしてしまった。

なぜ、貸してくれた下着を捨てるなんていう失礼な行動がありえると思うのだろうか。

「洗ってくれたんか?」

やはり中身は取り出さずに、紙袋を少し曲げるように指で押して、ためつすがめつしている。

「うん、洗ったよ」

「ありがとうな」

お礼を言われるようなことだったか。どう考えても当然のことにしか思えない。この人は普段、どんな生活を送っているのだろうか。

「洗って返してくれた代わりにっていうわけではないけど、何かしたいことはないんか? あんたは」

「したいこと?」

「例えば俺の体で、触ってみたいところとかないか?」

彼は椅子の近くにあったテーブルの上に紙袋を置いて、両手を軽く広げるようにした。

海外映画に出てくる人のジェスチャーみたい、と思う。

欧米の映画の中の登場人物は、何かというとキスをしたりハグをしたりしているけれど、私には、この期に及んでも、とても真似できそうにない気がした。

途方に暮れてしまう。

 

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