【前回の記事を読む】さっきまで履いていた私のショーツを、彼が突然手に取った…顔の近くまで持ち上げると「ちうー」と吸い始め……
バニーガールの夜
1 丁寧すぎる彼氏の話
「俺はあんたに、俺以外の人のことなんか考えられんようにしたいんやで。下着を脱いだり着たりするときにはいつも、俺のことを思い出してくれるようになってほしいんや。俺は今日のこと後から思い出すから、あんたも俺のこと思い出してほしい」
彼は私のショーツを顔の前にかかげたままで、そう言った。本当に信じられない人だ。
私が内心で呆れていると彼は、さらに神妙そうな顔をした。
「次のときは、心の準備をしておいてほしい。俺が一人でするのを見てもらうから」
「どうかな。無理かも」
「あんたは俺が服を脱ぐのも怖いか?」
「え?」
「あんたが自分で服を脱ぐことにしたんは、俺が脱ぐよりもあんたにとって自然なことだったからやろ? あんたはそんなに男が怖いんか?」
返事ができない。あまりにも不意に核心を突かれてしまった。
「次までに考えといてな。俺はなんていうか、あんたと永遠に抱き合えなかったとしても、それはそれで受け入れる覚悟はしてるから」
どういう意味なのだろうか。
私は否とも応ともつかない曖昧なうなずきを返した。
ひとまずその日は、彼の下着を借りたまま服を着て帰宅することにした。自分のショーツはカバンに入れて持ち帰る。彼の唾液で濡れてしまった下着をはいて帰るほどの勇気はなかった。
自宅で二人分の下着を手洗いして干している間、私は彼が一人でするということについて考えていた。
前に読んだSF小説の中に、男性用生理用品という単語が登場して驚いたことがある。その小説によれば、未来の世界では男性が身に着ける生理用品の発明および普及によって、人々の性生活が劇的に変化するという話だった。
実際にそんな発明がされたらどうなるのか、私には分からない。人の数ほどもあるものごとを一般化することは困難だし、そんな一般化は乱暴に過ぎる。空想は空想ということなのだろう。
彼は、私のことを考えながら一人でしていたと言っていた。彼の想像の中で、私はどんな私だったのだろうか。
とても不思議な心地がする。
さほど悪い気がしないのは、彼が言うように私が彼のことを割と好きだからなのか。
人を好きになるというのは不思議なことだと私も思う。
◆
「なあ、あんた、息子に名前をつけるとしたら何がいい?」
「はるゆきとか?」
「はるゆき?」
「私に息子が生まれるなんてまるでセイテンノヘキレキみたいな奇跡だから、晴れの日の雪で、晴雪」
彼は身を起こして、私のほうは見ずに真顔になった。
「息子って、そういう意味ではないねん」
「じゃあ、どういう意味?」
「まだ生まれてない、できてない子供のことではなくて、俺の息子のことやねん」
「息子さんがいるの?」
「そうではない。そうやなくて」
彼は目を閉じて、額を押さえ天を仰ぐようにした。
「この話はまた今度にしよう」