「にゃん太郎、どこに行ってたの。外は汚いからね」
智子ママは待ち構えていて、僕を捕まえると体や足をタオルで拭いてくれた。味を占めた僕は、一階の部屋の窓や玄関が開いていると、ママが知らない隙に、そっと散歩に出ることが多くなった。
いつだったか、知らない猫に出会った。しわがれた声で、「こっちへ来いよ」と呼ぶので付いていった。
奴は、外の世界のボス野良猫で、厳(いか)めしい顔つきをしていた。
はじめは、「ここは俺のなわばりだぞ」と威張っていて、僕に襲いかかってきたこともあったけれど、何度か会っているうちに、なぜか僕を気に入ってくれた。
彼の後について行くと、近所の“猫の道”を案内して、いろいろと教えてくれた。
この家にはよく吠える大きい犬がいるとか、こっちの家には猫の仲間が三匹飼われていて、外にもエサが置いてあるとか、またこの植込みの下を通ると近道で、今はもう住んでいない犬小屋があるから雨露を凌げるとか、
この家の人は猫嫌いで、嫌な匂いのハーブが植えてあるとか、何でも知っていた。
ハーブのある家の離れは静かで、日向ぼっこに最適な窓辺があって、よくボスと昼寝をしていた。
この頃は、きれいなピアノの音が聞こえてくる。最近置かれたらしいハーブの鉢の嫌な匂いがきつくて、窓辺に近付くことができなくなった。
とにかく、外の世界はいろんな冒険ができて面白い。
ボス猫のお陰で、僕の知識と楽しみが増えた。
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「臭い、臭い」と、僕のおしっこを後始末するママ。だんだん家に居づらくなり、ストレスが増えた。やっぱり外の世界が恋しい
【イチオシ記事】見つめながら、触れたいという不思議な感情が芽生えた。あの人の体に、頬に、髪に、唇に。緊張感のない弛緩しきった肉体は、無警戒な心そのものだった。
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