【前回の記事を読む】ある日、キャリーバッグに押し込まれ、“知らない家”へ連れていかれた。首には謎の器具…(何をする気だ)と思う間もなく、体を押さえ込まれ…

1、にゃん太郎物語

ある日、智子ママは赤い首輪をかけてくれた。

魔法使いの女の子が荷物を届けるアニメ映画に出てくる黒猫みたいだと、会う人みんなが僕をはやし立てた。

僕は抵抗せずに、智子ママが出かけたときは、できる限りきちんと留守番をして、なるべく阻喪(そそう)もいたずらもしない。

夕方には、猫キャラさながらに二階のベランダの縁に上がって、じっとママの帰りを待っている。家の前の歩道を歩いてくる姿を見つけると、同時に智子ママも気づいて、下から声をかけてくれた。

「にゃん太郎、ただいま。待っていてくれたの」

玄関のカギを開けている間に、さっと階段を下りていって、智子ママを出迎えた。

(おかえりなさい)と、足元にスリスリすると、抱っこして優しく撫でてくれた。僕は、ゴロゴロと喉を鳴らす。

変わったものだ。あんなに僕を嫌って、洋服に僕の毛が付こうものならすぐに払い落として近づこうとしなかった人が、今では僕を抱っこしてくれるようになったのだから。

それに智子ママは、僕のしぐさを何度もスマートフォンで写真や動画に撮っては、「可愛いでしょ」と自慢げに友達に見せているようだった。

僕は、ロッシーより、「にゃん太郎」と呼ばれることを受け入れることにした。

どっちにしろ愛称、つまりニックネームなのだから、智子ママが呼んだら、いつも(ニャーン)と可愛い声で返事をしてあげる。