さすがに酔いが回ってきた。隣の女はやたらと俺に体をくっつけて胸を押しつけてくる。男だったら堪らなくなり、女もそれが目的だ。

深酒をして気づいたら、女の部屋で目を覚ました、なんてこともあった。

「私、好ちゃんがプロデビューしたときからファンなのよ。次の試合、必ず応援に行くからね」

マユミが色っぽい声で誘ってくる。毎回そう言う。

しかし、試合会場まで来たことはない。ここから水道橋の後楽園ホールまでは、電車で三十分もかからない。

だが、あの娘(こ)は必ず三時間以上時間をかけて俺の応援に来る。三時間以上時間をかけて練習を見に来る。

試合の招待券を渡そうとしても受け取らない。

「新山さんのファイトマネーだから」と、言ってジムが用意した指定席の代金を送ってくる。

先程の船山の言葉が頭に浮かぶ。

「新山先輩のことが本当に好きなんだ」

彼女に愛(いと)しさを感じた。

「今度、デートに誘ってやったらいいじゃないですか。喜びますよ、彼女」

“明日の夜、電話しよう。食事でもしないか、と誘ったら彼女はどうするかな?”

彼女に対する愛(いと)しさを初めて自覚した夜だった。

 

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