第1章 認知症とはどのような病気か?

脳には、「記憶」というとても大事な働きがあります。認知症は、いろいろなことを「記憶する(覚える)」あるいは「記憶していることを引き出す(思い出す)」ことが難しくなる病気です。

認知症は病気なのですが、病名というよりも症状(症候群)で、いろいろな病気が原因となって認知症になります。

詳しくいいますと、認知症とは、慢性あるいは進行性の脳疾患によって記憶、思考(理解、判断)、見当識、計算、学習、言語、感情(喜び、楽しみ)など多様な高次脳機能の障害を呈する症候群です。

それによって、複数の認知障害が現れ、健常者を基準とする社会生活に支障を来すようになった状態をいいます。

複数の認知障害とは、もの忘れ、行動異常(暴力、徘徊、無為など)、異常な心理状態(幻覚、妄想)、抑うつ(アパシー、無気力、感情鈍麻)などですが、原因脳疾患、障害部位や進行速度もその人ごとに異なり、認知障害の症状の現れ方も同じではありません。

認知症の分類や、認知症を来す疾患について、その主要な疾患は後述しますが、最も多いのは脳細胞がゆっくりと死んでいく変性疾患であるアルツハイマー型認知症、次いで多いのが脳血管障害(脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化症)の後遺症や合併症として起こってくる血管性認知症、3番目に多いのが変性疾患のレビー小体型認知症です。

その他、これらの混合型や変性疾患の前頭側頭型認知症があります。なお、脳血管障害による認知症は、当初の脳血管性認知症から血管性認知症に変更されました(脳卒中治療ガイドライン)。その他の疾患については付録1の一覧表(認知症を起こす病気)をご参照ください。