第1章 今動き出せないあなたへ

第1話 【困れ。困らなきゃ、なにもできない。】

「困れ」なんて一見すると、少し乱暴な言葉に聞こえるかもしれません。

人は皆、誰もが、困らない人生を望みます。できることなら問題もなく、苦労もなく、穏やかで平和な日々を送りたい。そう思うのが自然です。

しかし、人間という生き物は不思議なもので、本当に困らない限り、本気で考えないのです。危機感がなければ、人は動きません。

まだ余裕があるうちは、どこかで言い訳を作ります。

「まだ大丈夫」「そのうちやろう」「今じゃなくてもいい」「これくらいでいいだろう」

気づけば人は、そこで立ち止まってしまうのです。いや、立ち止まるというより―自分を納得させてしまうのです。

つまり「まぁまぁでいいか」という無難な場所に落ち着いてしまう。

ところが、逃げ場がなくなるほど困ったとき、人は突然動き出します。それまで眠っていた力が目を覚まし、知恵を絞り、エンジンがかかるのです。

私自身も、本当は穏やかに生きたいと思っています。しかし、振り返ると、かなり困ることが多い人生でした。

私は逆子で、帝王切開で生まれました。母は産まれたばかりの私のことを一刻も早く父に見せようと、喜び勇んで自宅へ帰ったそうです。

ところが―なんと! その直後に、両親は離婚したそうです。

生い立ちから何とも穏やかではない話です。まさに「困った」人生のスタートでした。

その後も困った、困ったのオンパレードで、とてもじゃないけど順風満帆とはいきませんでした。

変わり者だと仲間外れにされ、先輩には苛(いじ)められ、行き場をなくし、グレてみたりもしました。

中途採用で入った会社ではトップの成績を出しましたが、体調を崩して職を失いました。

六年間も体は思うように動かず、治療代の借金だけが増えていきました。

少し回復した頃、私はものまねオーディションの狭き門を突破し、芸人の道に入りました。

しかし待っていたのは、過酷な下積みと、どさ回り。必死でやっても、なかなか芽が出ませんでした。

けれど、私はある時はっきりと自覚しました。

「このままでは私、本当に困る」

そう思った瞬間自分と向き合い、考えるしかありませんでした。

お客様にどうしたら笑ってもらえるのか。どうしたら心に届くのか。どうしたら必要としてもらえるのか。

 

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「まぁまぁでいいか」で終わらせない…困ったから考え、観察し、人の表情を読み続けた25年。ものまね芸人が“平均点”を嫌う理由とは

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