空港で彼女と再会し、早速アリフェリス先生の車に乗り込み、アパートまで行く途中のことである。
道が混雑してフラスト気味なのに、少し先を走る車が危なっかしくスイスイと平気で車線を越えてこちらの車の前へ入り込んだりするものだから、イライラした先生が「同じ車線をキープしろ、このアホ!」と叫ぶ。最後の部分が日本語だったので、皆で大笑い。
その晩はやはり彼女と積もりに積もったアメリカ体験談でついに寝る間もなく夜を明かしてしまった。
数日後、先生が友人から借りた別荘が同じ州内部のスプリングフィールドという町の近くの湖の湖畔にあるというので、そこまでドライブ。
この街はこぢんまりとした落ち着いた街で、全体に北方の町らしく清潔感があり、道、公園、家の庭など花が咲き乱れてとても綺麗である。
富士五湖の河口湖ほどの大きさの湖の辺に面し、林に囲まれたその木造の別荘は一介の貧乏学生の目にはいかにも豊かなアメリカを象徴するような立派な佇まいでそこに建っていた。
広々としたリビングは湖に面した側が大きなガラス張りで、目一杯日が入って明るく、高めの天井からはシンプルな灯りがシャンデリアふうに垂れ下がり、一方の壁にはレンガの暖炉、真ん中には大きな布張りのソファーとテーブル。
落ち着いた色の木製の本棚、ステレオコンポと品良く調度品が並んでいかにも寛ぎやすい感じ。ベッドルームが3部屋。トイレも2つ。
裏の出口からは湖の中数メートル程まで板が渡してあり、そこから水の中にジャンプできるようになっている。
まさに、映画で見るアメリカの別荘のままで、70年代初頭の日本で暮らす自分には夢のような環境であった。やはり、アメリカは豊かだ!
翌日、街で映画を観ようということになり、先生ご夫妻、ゆり子さんと自分の4人で市中をブラつく。と、いつの間にか自分たちの後ろから7ー8歳くらいの子供がついて来る。
「ハイ!」と挨拶をすると恥ずかしそうに「ハイ!」と答えながら、ちょっと後ずさりする。見ると周りの子供たちもこちらを物珍しそうに見ている。
そうか、我々のようなアジア人は見たことがなく珍しいのだ。かわいいなと思う反面、今どんな感覚で自分たちを見ているのだろうと気になりもする。
嬉しいような、困るような、またそれが続くとちょっと鬱陶しいような。日本の田舎で外人を見かける子供が物珍しそうに後を追ったり、「外人!」と指をさしたり、からかって「ハロー!」と声を掛けたりするのを何度も経験したが、この逆転現象には驚き、戸惑ったが、日本で珍しいものとして扱われる「外人」の心理はこんなものなんだろうかと改めて分かった気がする。
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