それから数か月後、魚釣りの帰り、道端に着物姿の若い女が一人立っているのが目に入った。彼女が見ている先に兵隊の格好をした若者が胸に白い花を付けて歩き、その後ろを家族らしい人が付いて歩いて来た。

彼女を見ると、あの葬儀場で見た母親と同じように目頭をハンカチで拭っていた。

彼女の数歩手前で兵士が歩きを止めた。そして彼女に向かって敬礼をした。敬礼をした手が僅(わず)かに震えている。

そのまま二人は見つめ合った。まるで時の流れが止まったみたいだった。

彼女の瞳から大粒の涙が流れ落ち、乾いた地面の上に落ちた。

唇をかんで、泣くのを懸命に堪えている。それでも声を絞り出し、

「必ず帰ってきて。私、ずっとあなたが帰るのを待っている」

後は涙で声にならなかった。

兵士は項垂(うなだ)れたが、すぐに気を取り直し、姿勢を正して歩き出した。その後ろ姿に向かって、張り詰めた糸が切れたように叫んだ。

 

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