3 金星探査計画の始まり

火星を経て、次なる目的地は金星へ

1990年代の後半、宇宙科学研究所ではハレー彗星探査、火星探査に続く惑星プロジェクトを何にするかという議論がなされていた。当時すべてのプロジェクトは研究所の持っている固体燃料推進のミューロケット1で行うことが前提となっていた。

1990年代以降は直径2mを超える大型ロケットM-V(ミューファイブ)が使用され、1号機に宇宙VLBI実験2を行った工学試験衛星「はるか」、 号機が欠番で(月探査機 LUNAR-Aを打ち上げる予定だったがプロジェクトは打ち上げ前にキャンセル)3号機では火星探査機「のぞみ」が打ち上げられていた。

このロケットの打ち上げ能力はそれ以前のミューロケットからは格段に進化していたものの、地球から遠く離れた外惑星まで探査機を飛ばすには、時期尚早と考えられていた。そこで、当時飛行中だった火星探査機「のぞみ」の次の目的地は金星が有力な候補であったと聞いている。

また「のぞみ」(PLANET-B計画)の目的地を決めるときに金星か火星かの2つで激烈な議論があったため、火星の次は金星という雰囲気もあったらしい。

1999年5月には宇宙科学研究所理学委員会のもとに金星探査計画ワーキンググループ(WG)が作られ、サイエンスの目的、それを実現する探査機の性能、軌道計画、観測装置などが議論されることになった。

しかし、金星探査計画WGでの議論は必ずしもスムースではなかったようだ。

PLANET-B計画ではどちらも磁場を持たない火星と金星の間で目的地の議論が分かれ、太陽風と磁場のない惑星の相互作用がどちらを目的地にしても科学的に解明されるべき目標とされていたが、

この議論を引き摺って金星でも電離層より上空のプラズマ科学を推すグループと、それ以外のサイエンス(後述の気象観測)を推すグループがあり、これらを両立させる解を見つけることが難しかったのである。


1 ミューロケット

科学衛星打ち上げ用に開発されたロケットのシリーズで、改良を経て、惑星探査機打ち上げ用ロケットM-Vにまで至った。

2 宇宙VLBI実験

「VLBI」とは「Very Long Baseline Interferometry(超長基線電波干渉法)」の略。地上と宇宙にある電波望遠鏡を組み合わせて観測することで、長い距離(=基線)を作ることができるため、高解像度で観測することが可能になり、精密なデータを得られる。

 

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