【前回の記事を読む】2010年12月、金星の裏側で通信が途絶えた惑星探査機「あかつき」…予定時刻を過ぎても信号は届かず、管制室は騒然――約90分後……
第1部 金星を目指して
2 金星とは?
ここで金星について一般的に知られていることを振り返ってみよう。
金星は太陽系の惑星の中で、太陽から2番目に近いところを回る(地球は3番目)。固体からなる惑星である。次の図では地球のすぐ左側にある。
図の距離は正確でなく、金星は地球と太陽の距離(1天文単位)の約0.7倍の位置にある。従って地球との距離は0.3天文単位から1.7天文単位まで変化する。
特に地球に近いときには、地上から見て非常に明るく輝いており、「明けの明星」や「宵の明星」として昔からよく知られている。
大きさもわかっていて半径は約6050km、この値は地球(半径約6380km)に近い。太陽からの放射量は地球の約2倍に過ぎず(0.7²:1.0²=49:100〜1:2)、大きさも太陽からの熱も似ているので、しばしば地球の双子と呼ばれている。しかし、惑星は厚い雲に覆われているため、その表面は見えない。
1980年代にソビエト連邦とアメリカが金星探査を行う前は、雲は水蒸気でできており、雨が降り続け、雲の下にジャングルが存在すると想像されていた。
しかし、1980年代のソビエトのベネラ探査機は、金星は高温で乾燥した世界であり、二酸化炭素の大気の圧力は90気圧で、地表の温度は740K(約467℃)であることを明らかにした。
レーダーの地表面観測によるとアフロディーテ大陸やイシュタル大陸などの高地があるが、全体的にはのっぺりしていて、火山から溶岩が流れたのではないかと思われている。
もう一つ地球と金星で違うのは大気の流れである。詳しくは第1部第6章で後述するが、この大気の流れの違いこそが、金星探査機「あかつき」が取り組むべきテーマの大きな部分を占める。
金星の気象は、地球の気象学の知識では説明することが難しい。金星を探査することで金星の気象を説明できる理論が得られれば、金星の気象学と地球の気象学を合わせて、もっといろいろな惑星に適応できる気象学ができる。それを以て地球の気象を考えると、もっと深い意味で、これを知ることができる。