【前回記事を読む】納期が迫る重要案件に、取引先から強烈なクレームが…半年も関わった担当者は外注先に丸投げし、未だに何を作るか分かっておらず……
第1章 牛乳の味はほろ苦い
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ここでわかったことは、プロジェクトでらくらく乳業では生の牛乳をタンクに入れたあと、2秒程度の低温殺菌によって製品化するプラントの制御が目的で、この制御プログラムをらくらく乳業が開発しているのだが、その制御プログラムをサポートするソフトウェアの開発を依頼されていた。
この制御プログラムの方式は、一般にDDC(Direct Digital Control、直接計算機制御)といい、工業プロセスにおいて多数の制御ループをデジタル計算機でオンライン処理することをいう。すなわち計算機で直接プラントを制御する方式である。
一般には、計算機から信号を出してプラントを制御することで、その制御プログラムを簡単に書けるようにするサポートソフトウェアを提供する必要があるのだが、そこには、らくらく乳業独自の内容が多いらしく、そのサポートソフトウェアの仕様の変更が多くなっているとのことである。
川本は、ほぼ実態がわかったと思った。ハードウェアも簡単であるし、客先の作成するプログラムのサポートソフトウェアの内容もある程度理解できるので、その仕様の変更許容期限を設定する必要があると考えた。
まず、川本は亀山に「このプロジェクトの確定仕様書を見せなさい」と言った。
亀山はきょとんとして、「それはなんですか」と聞いた。案の定だと川本は思った。
これも亀山に対する勉強かなとあきらめて、確定仕様書について話し始めた。客先に確定仕様書を出していないプロジェクトでは、話にならない。
確定仕様書には、当社が納入すべきハードウェア仕様、ソフトウェア仕様、工程表、納入ドキュメントなど、契約に基づいた内容が記載されていなければならず、その内容に関して客先の承認を得ることがプロジェクトのスタートラインだからである。このプロジェクトは、これをやらずに進んできたのだ。川本は、今日は徹夜だなと悟った。
川本は、何よりこの確定仕様書を客先に提出し、目標を明確にする必要があると判断した。
「湯本さん。お邪魔ついでに申しわけありませんが、今夜、この部屋をお貸しいただけませんか。できれば、明日、顧客に提出する資料作りをやらせてください。今から本社や工場に帰っても時間がないと思いますので。お願いするついでに申しわけないのですが、らくらく乳業担当の人にサポートソフトウェアの仕様の整理をお願いできますでしょうか。よろしいですか」
「ここでよければ、お使いください。明日までに作るのですか」
「はい」