はじめに
この小説はシステムエンジニアの苦労話を基に創作したものである。現代社会では、製造業、道路、航空、鉄道、通信、発電、ダム、食品などの生産効率向上や安全運転・運用、サービス向上のために産業用の計算機システムが多く使われている。
具体的にどんなところに使われているかというと、鉄鋼生産(高炉、厚板、ホットストリップミルなど)、火力発電所、原子力発電所、化学プラント(製油所、エチレン製造など)、コンクリート製造、食品製造、医薬品製造、道路制御(トンネル、高速自動車道、道路制御など)、
航空管制制御、飛行場の情報管理、航空会社のパッセンジャーシステム、競輪・競馬・競艇の発券管理、鉄道の発券処理、鉄道の運行管理、新幹線の点検整備、鉄道の保線整備管理、CAD、通信網整備など使われている分野は多岐にわたり、使われていないほうが少ないのではないかと思う。
実際に経験したことのない分野ではもちろんのこと、経験している分野のプロジェクトであっても、種々のトラブルに見舞われることが多いのである。すなわち、納期遅れ(工程遅れ)、機能不良・不足、品質悪化、性能不足、原価割れ、人材不足などが発生してくる。この現象を「プロジェクト崩れ」と呼んでいる。
システムエンジニアは、こうした問題を起こさないために、事前に十分に客先とコンタクトして、仕様を吟味し、体制を確保し、開発過程をビジュアル化して、問題の発生を事前に予測し、対策を立てて遂行していくのだが、誰でもが均質に遂行できるわけではない。能力の格差が大きいのも当然のことで、一説には数十倍の差があるとか言われている。
程度の低いシステムエンジニアが担当になったプロジェクトは、悲惨である。必然的にプロジェクト崩れが発生してしまうことが多い。プロジェクト崩れとなる現象は、優れたシステムエンジニアなら、事前に察知して対処できるのだが、通常客先からのクレームを受けて判明する場合が多い。
客先の怒りを受けての対応は、客先を納得させる対策を示さない限り許されない。したがって、崩れてしまったプロジェクトをどう立て直すかは、大変な作業となるのだ。これは誰でもが解決できるわけではない。
崩れてしまったプロジェクトの原因を調べて、根本的な対策と多くの労力をかけなければ、解決にならないのだ。
この物語は、計算機システムが本格的に開発を迎えた1990年代のシステム作りで、プロジェクト崩れになったシステムを解決させたある男の話である。システムエンジニアとは因果な商売である。