こうして義継が自宅に戻ったのは、夕方である。少し帰るのが遅ければ、外は完全に夜だ。幸い外は薄暗い程度で、今居る自宅の一室も同じ程度の薄暗さだ。

突然、トントンとドアをノックする音がした。すぐに蛍光灯の明かりを点けた。

「誰ですか?」

一体、誰なんだろう。此れから夜になると言うのに。

「淑子よ」

此の時の征一の祖母にあたる淑子は、まだ義継とは結婚しておらず婚約中である。

誰であるかは分かったのでドアを開けると間違い無く淑子だった。何か言いたそうだ。

「早くから何処行ってたの? 朝来たら居なかったけど」

「うぅ〜ん、それは不思議な所へ出掛けてた」

言ってしまったけど、更に詳しく説明しても分かってくれないだろう。「其の不思議な所って、どんな所?」

「そうだな、天上の世界で翼を持った天の居る世界。天界かな」

「そんな世界、本当にあるの? 何処かで夢を見てたの?」

 「そう思われても、仕方ないな」

義継の不思議な話は此処で終わった。聞いていた征一は信じ難い顔をしている。

「本当に、そんな世界があったのか、信じられない」

「婆さんは、今でもこんな話は信じてない」

「だけど、どうしてそんな世界、存在するの?」

「人々の想念が産み出したとしても、どのようにかは、儂には分からない」

人にはどう考えても分からない事がある。其の上、目の前で見た事が一般の現実と余りに違うと受け入れ辛い。義継の方としても、今でも天界での出来事が本当は夢の中なのではと思ってしまう事もある。

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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