【前回記事を読む】神として崇められたゼウスは、元は地上の王だった——一国の繁栄を願ったゼウスの最期は食事も喉を通らないほど苦しみ……
第二章 祖父の行きし天上界
「ゼウス様、着ている物が変わってきていますが」
「すぐに、ギリシャの服に変わる。生きていた時は、クレタの服を着ていた」
すると、見ている義継の目の前で、本当に元のギリシャの服に戻っていった。
「どうも、地上の人間の想いが生きてる時と違う服に変えてしまうようだ。此れで、そなたに話す事はない。儂の下部(しもべ)の天のカリトンと共に地上に戻るが良い。其の前に天界を見物をしていくのも良いと思う。二度と此の世界に来る事も無いから」
義継にとっては、もう一回天界の景色を見てみたいと思っていた。何せ黄と赤の花の咲く広い花園なんかは何度でも見たい。だけど、此れで話す事はないとゼウスは言っているが、話すには後味が悪く罪の意識を感じてしまう事なのか? 権力者なら、国を一つにまとめる為に可なりどぎつい事を為す場合もあるそうだが。ならば、更に尋ねて聞こうとする気にもならない。
此れから天界の景色を見るなら、ナマクアランドのような黄と赤の花の咲く花園が良い。自分を連れてきた天に頼んでみるか。カリトンと呼ばれていたな。
ゼウスの宮殿を出た義継は、天のカリトンと共に天馬に乗り天界の景色を眺め続けた。もちろん最もお気に入りはナマクアランドのような黄と赤の花園だ。カリトン自体も其れを分かっている。此の世界に来た地上の人間は、誰もがあの花園が最も気に入るらしいのだから。
義継は天馬に乗って下の花園を眺め続けている内、カリトンに「彼処がいい」と言って天馬を花園に降下させる事もあった。
花を間近で目にしてみると、色は赤と黄ではあるが、よく見ると微妙に違う。形も色々だ。其れは花園の花に対し、より興味を持たせる。
義継は花園の中を駆けたり寝転んだりした。そして時間は知らぬ間に過ぎてゆく。
楽しければ、時間は感覚的に早く過ぎてゆくものだ。
カリトンが、ふと義継に声を掛けた。
「もう帰らないと、帰った時、夜になっていますよ。帰りましょう」
「えっ、そんなに時間、過ぎてる?」
「そうですよ」
すぐさま二人は天馬に乗り、天馬は天界の上を飛んで行く。そして出口の雲のトンネルに入り、其のトンネルも抜けて行った。大空を飛ぶ天馬は海上の方へと高度を下げ低空を飛び続ける。低空と言っても、船にぶつからない程度の高さはある。
こうして空を低く飛び続けるのは、義継が寒がらないようにとのカリトンの配慮もある。上空を飛ぶともなれば、可なり寒いのだ。
前方に島が見えてきた。二人を乗せた天馬は、高度を上げる。場合によっては、此のように高度を上げる事もある。