「人狼ゲームの話題は一旦やめない?」

「どうして?」

「センシティブな話題だから」

「センシティブ? どこがどう?」

「人狼ゲームって人狼サイドが自身の職業を上手に騙(かた)って場を混乱させることで勝利に導くゲームでしょ? もしも私達が今、自分達の意思に反して凶悪な──あくまで仮定の話でしかないけれど、凶悪な人狼ゲームに巻き込まれてるのであれば、全員の認識を揃えてフラットな状態で始めたほうがいいと思うの」

言われてみれば、私の部屋の張り紙に、興味深い一文があったことを思い出した。

──なお、あなたの職業はあなたしか知りません。

すなわち、自分の職業を周囲に明かすことには細心の注意を払いなさいという警告とも取れなくない。

もっとも色々な出来事があり過ぎて、私のキャパシティをすでに超えてしまっている。

いったいなにが正解なのか、ポンコツの私には判定できない。

「まずは自己紹介から始めない? お互いに誰が誰だかも知らないわけだし。ただしくれぐれも職業の話は抜きにしてね」

先程待ったをかけた女性が建設的な提案を持ち出した。

「それってリアルの職業も含めて?」

「そうね。今は職業の話は一切なしで。リアルの職業の話をしてるのか、この世界での職業の話をしてるのか、聞いてる側は混乱しかねないでしょうし」

誰からも異論はなかった。名前がわからないと不便というのは、全員の共通認識ではある。

「じゃ、まずは言い出しっぺの私から」と、キャスター風の美人が主導していく。

「私の名前は夕霧蘭。今後、この場を仕切らせてもらうかもしれないけど、そのときはよろしく」

リーダーシップに長け、仕切り役を自称する。蘭は自己紹介の順序についても自ら提案していった。

「自己紹介が終わったら、次に自己紹介してもらいたい人を指名していく方針にしない? じゃ、次はあなた」

なぜか真っ先に私が指名された。前触れがなかったので、ついあたふたとしてしまう。

「か、川原琴音です。よろしくお願いします……というか、暢気に自己紹介なんかしてていいのかな、とかちょっと思ったり思わなかったり。もっと優先的にやったほうがいいことあるような、ないような」

「と言うと?」

仕切り役が少し機嫌を損ねている。

「ここはどこよみたいなこととか。私のスマホがなくなってるんだけど、みんなのスマホはどうなのだとか。誰か持ってたら連絡取るほうが先だよねとか」

「それは自己紹介の後でよくない?」

誰も私の意見を援護してくれようとしない。まずは自己紹介を完遂させるべき──がこの噴水村の総意のようなので、素直に従ってみる。

 

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全員のスマホが消え、誰も現在地を知らない。謎の場所へ閉じ込められた9人の女性。「これって、デスゲームだよな」と誰かが言い出して……

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