【前回の記事を読む】メイド喫茶で「いらっしゃいませ、ご主人様♡」と愛嬌を振りまくキャストが監禁された。部屋の出入口には彼女の名前が刻まれた表札が……

問題篇

COUNT 9 エ

 
 

早速、通路を適当に歩いてみることにした。意外に私は行動力に長(た)けている。

そのまま進むと、まもなく別の部屋のドアの前に到着した。そのドアにもネームプレートが刻まれている。

「AYA」アヤさんという人がいるらしい。きっと女性だ。私の友達にアヤという名前の友人が二人いるが、どちらも性悪だ。今までの法則に従うならば、この部屋の住人であるアヤもきっと要注意人物だ。ちなみに決めつけが激しいのは、私の仕様でもある。

通路をさらに進む。

「AGEHA」アゲハさん?

珍しい名前だが、揚羽蝶の揚羽かもしれない。

もしかしてここは女子寮みたいな場所かもしれない。女性らしき名前が続くのを見て、私は勝手に推理した。

あれ?

前方に人影を捉えた。この建物にはアヤさんもいれば、アゲハさんもいるはずで、私が偶然誰かと出会ったとしても不思議ではない。

私はいそいそと人影に向かう。相手も私に気がつき、こちらをじっと窺っている。

「こんにちは」

私から積極的に声を掛けた。

私と同じ年頃ではあるまいか。白いシャツに薄いグリーンのブラウスを着ていた。しゃがんでいるのではっきりとはわからないが、小柄で華奢な印象を受けた。あどけない顔立ちをしていて、彼女を一言で表現するならば“ザ・少女”だ。

「こんにちは」

返事がなかったので、もう一度声を掛ける。明らかに警戒し、私が近づくと彼女は後退(あとずさ)りしていく。表情は見る見るうちに強張った。

「私に構わないで」

私達の関係は彼女の拒絶からスタートした。

「いや、私は全然怪しくないから」

「とにかく私に構わないで頂戴」

化け物と遭遇したかのような眼差しで、こっちを睨みつける。おそらく不安が彼女を苛立たせていると思い、自己紹介を通して彼女との距離を縮めてみようと試みる。