〈はっきり言って、この先の将来がどうなるかよりも、今日帰ったら父さんから殴られるかどうかのほうが最重要課題なんですよ〉

そんなことはもちろんトミサトには言えなかった。

父さんは少しイラついていた私の心情を見逃してくれなかった。昔から私たちが不満を抱いているかどうかを察するのが抜群にうまかったよね。何か言われて、少しでも不満げな表情を見せるや否や、いつだって父さんは三人兄妹をすぐさまひっぱたく理不尽極まりない人だ(酔ってなくてもね)。

だから私はいつも父さんにとびきりの笑顔で応えるように努力していた。そのおかげで大人になってからも「有香ちゃんはいつもニコニコして笑顔が良いねぇ」とよく言われるようになったのだが、それは叩かれるのが嫌で身についた悲しい習慣だ。しかし兄のサトシはそれがヘタクソなので、いつも父さんにひっぱたかれていた。

「テメェらが黒だと思っても、俺が白だと言えば白なんだよ!」父さんはいつもそう言っていた。

「クソガキ! 呼ばれたらすぐに下りてこい!」。トミサトのせいでムカムカしていた私は、うっかり不機嫌そうな顔を父さんに見せてしまったようだ。

「なんだ! そのツラは! テメェ、父親に向かって文句があるのかこの野郎!」

父さんは文句をつける理由を見つけ、ただならぬ殺気を隠しもせず、すぐさま私の横面をひっぱたいた。

〈しまった。油断した。顔はやられるとまずい〉

父さんが私に暴力を振るっていることが他人に知れてしまう。だから傷をつけられないように、いつもは殴られる時に顔を打たれるまいと避けていた。すると父さんは「有香! テメェ! 生意気に親が殴るのを避けるんじゃねぇ!」とボルテージを上げるのだった。

〈そんなこと言われてもねぇ。捕まるのは父さん、あなたなのですよ〉

 

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母が妹だけ連れて家出して、私は父と2人暮らし…完全にイカレた父が木刀を振り上げた。〈本気じゃん、やられる〉振り返らず走った

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