【前回の記事を読む】人生100年時代が浸透してきた昨今、日本にはエネルギッシュな高齢者が増えた。彼らを見て若い世代が考えていることとは……
二
拓也は朝一番の時限タスクをこなすためにオフィスへは毎朝七時三十分前後に着く。誰もいないオフィスは空気が澄んでいて自分の動作によって生じる音以外に余計な音がない。心地よく平穏な時間が流れる。自分一人の空間にどっぷりと浸かることができる。
このままオフィスには誰も現れず自分一人の時間が続いてほしいと心の底から願いながら次々と折目正しく早朝の業務をこなしていく。
午前中の業務は正確さとスピードが求められる。特に集中力と注意力が求められる業務に取り掛かろうとしているまさにその時、iPhoneのバイブレーションが激しく振動した。
直子からの着信だ。よりによって業務中、しかも慎重に対応しなければならない時間帯にである。
イラッとしそのまま放置しようとしたが振動が中々止まらない。あまりにもしつこいので仕方なく切れ目のいいところで手を休め、電話に出た。
「あ、もしもし、パパ? 今、話せる?」
「今、取り込み中なんだけど……」
「ちょっとだけ話したいことがあるんだけど。いいかなー? あのね、茜が大学の授業でパソコンを使うんだけど、全員強制的に購入しなければならないのよ、それで保護者がパパになっているからパソコンの業者さんから色々と購入に関する説明とか契約のことで連絡が行くことになってるんだけど、いいよね?
ほら、事前に言っとかないとさー、アタフタしちゃうかなと思って。それで電話したのよ。お金は、大丈夫だよね?」
「大学生になると色々と掛かるなー。いくら?」
「込み込みで十五万くらいかなー」
「そんなに掛かるの? しょうがないな、予備費を使うことにするよ。電話が来るのを待ってればいいんだね?」
「そぅ、パパの携帯番号は大学に登録されているから業者さんからの電話を待ってて。二、三日中に来ると思うから」
「分かった……」
「チェッ」
何でこんな時に掛けてくるんだ……。電話を切った後、しばらく拓也の気持ちは収まらなかったがイライラしている暇はないとすぐに気持ちを切り替えて次の業務に取り掛かった。よほどの急用でなければメールで済ませればいいのにと腹が立った。