第一章 家族ネタ

昔の子供

A お嫁に行くと、赤ちゃんが生まれるって、子供の頃から知ってた?

 そんな事知るわけないわ。

 妊娠っていう言葉さえも知らんかったわ。

 そうや。そんなん誰も教えてくれへんよ。

 女の人が、大きいお腹を抱えて歩いてるのを見て、ああ赤ちゃんがいるんやなあぐらいしか分からんかった。ましてや、それを妊娠という言葉で認識した記憶はございません。

 えらい上品な言葉でどないしたん。

 ちょっとお育ちのいいのを披露したんです。

 誰が育ちがいいって?

A 教養が邪魔をして。

 教養? 今日どこに用があるねん。

 用なんかない。お前と話してたら、余計におかしくなる。教養のことはおいといてや。

 どこにおいとくん?

 赤ちゃんが、おへその中から外の様子を見て「もうそろそろかな。もう出ようかな」って思ってると思とってん。

 お前そんなアホやったんか。そんなこと赤ちゃんが思ってる訳ないやろ。そんなケッタイなこと、誰に教えてもろたん。

 おばあちゃんやろか。

 おばあちゃん、そんなアホなこといわんやろ。

A それ以外に疑問に思ったことないか。

B 結婚してないのに、なんでお腹が大きくなってんねんって思ったことはある。

 どう解決したん。

 本当は結婚してはったんやなあって、思うことにしてた。

 単純やなア。子供にそういうこと尋ねられたらどうする。

 困るやろな。どう答えるお前は。

 重々しく権威を持たせて、敵を威圧して、「結婚してたんです」って納得させなしゃあないわな。

 ほんま子供って、どんな質問をしてくるか想像つかんもんな。びっくりするような質問してくる時があるで。

 女房とエッチなテレビ見てて、ふいに子供が起き出して来た時は、あせるもんな。慌ててテレビ消すもんな。

 なんで消さなあかんねんって思うけど、やっぱり消すもんな。

 今映画はクライマックス、ええとこや。人目を忍ぶ悲恋の男女が、ひしと抱き合い、さあこれからって時に「おかあちゃん」ってやって来られてみ。慌てるで。