「お前たちにはもう興味がなくなった」

まるで不要になった玩具を放り投げるかのような、冷たい捨て台詞だった。

顧問を失った男子バレーボール部に、かつての居場所はなかった。誰にも見向きされず、練習時間の取り決めは反故にされ、体育館は男子バスケットボール部が当然のように支配していた。

「俺たちは弱くなんかない。このままで終われるかよ」

誰かが呟いた言葉が、いつしか皆の心に火をともした。声高に鼓舞するでもなく、自然と一体感が生まれていった。誰もが胸の奥で、勝利への飢えを抱えていた。バラバラだった心が、一つの勝利に向かって静かに重なり始めていた。

自分たちに足りないものは何か。どうすれば手に入れられるのか。

「最弱」と呼ばれたバレーボール部に課せられた宿題は、決して容易ではなかった。だが、それに挑むしかなかった。

僕らは宿題の答えを探しに、山田によって遠ざけられていた古参のコーチ・吉岡を久しぶりに訪ねた。吉岡は地元で仲買いをしながら、合間に後輩たちを指導してくれていた。現役時代は中学バレーボール部を最強に押し上げ、対戦相手から恐れられたという。高校でも活躍し、県代表に選ばれた実績を持つ。

口数は少ないが、初心者だった僕らにもわかりやすく教えてくれ、練習を重ねるうちに「自分たちは強くなれる」と思わせてくれた存在だった。

ただ、山田と練習方法を巡って対立し、チームを離れてからは半年以上が経っていた。

「僕たちは、1度でもいいから勝ちたいんです。もう1度、指導してください」

と願い出た。吉岡は一瞬だけ目を見交わし、そしてうなずいた。

「俺にできることがあるんだったら、協力するよ」

止まっていた時計が再び動き出す音が聞こえた気がした。

男子バスケットボール部には正面から交渉し、ルールを守ってもらえるよう了解を得た。

さらに、前任の顧問の計らいで他校との練習試合も始まった。体育館を使えない日は、雨の中でも自転車を漕ぎながら遠征へと向かった。試合を重ねることで、攻撃のバリエーションを広げ、勝負所で粘ることができるようになっていった。

 

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