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事件翌日。
空閑と沢渡は、他班の刑事と犯人がチェックアウトした午前8時12分から2時間(午前10時半)を目途に、現場となるゲイ専門ラブホ「XOX」から地下鉄・新宿三丁目駅に至る経路に設置されている防犯カメラの映像を収集した。
件数は60件を超えていた。空閑・沢渡も日付が変わるまで防犯カメラの映像をパソコンの画面で追った。一件一件に思ったよりも時間がかかる。とても一日で終わる作業ではなかった。
◆
防犯カメラの確認で一日を潰した翌日、昼過ぎに登庁した沢渡は打ち合わせテーブルで死体検案書を見ていた。
【司法解剖による死体検案書】
・死因は窒息死(浴槽に顔を沈められ頭部を押えられ窒息した)
・外傷は認められない
・薬毒物検査…合成カンナビノイド系ドラッグ(大麻)及び、トリアゾラム系睡眠薬(ハルシオン)検出
・アルコール検査…アルコール検出。血中濃度0・11%~0・15%。数値から酩酊状態
・胃の内容物検査…未消化のラーメンが胃・十二指腸の中に残存。消化状態から食後3時間から4時間と推定
・精液検査…被害者のアヌスに精液など成分は検出されず
・歯科検査…下顎の右・大臼歯(親不知)抜歯・虫歯は所見なし
備考…黒薔薇は生花を加工して作られた枯れない花・別名「プリザーブドローズ」
ポケットでスマートフォンが振動した。取り出して液晶画面を見ると空閑からだった。
「もしもし、沢渡です」
「検案書は来たか?」
「先ほど鑑識の乾主任から受け取りました」
「そうか。あと、10分で署に着く」
「ハイ、お待ちしています」
それからきっかり10分後、昨日と同じ黒のカットスエードをトラッドスタイルに着こなした空閑が登庁した。
殺人担当の刑事とは思えない洗練されたスタイルだ。刑事(デカ)の匂いはしない。
「おはようございます」
沢渡の挨拶を無視して、空閑は打ち合わせテーブルの椅子にドカッと座った。
「堅苦しい挨拶は、以降なしでいこうや」
空閑のぶっきらぼうな返事が返ってきた。
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