「いやいや凄いというほどではないです。特に最初はほとんど収入がなくて大変だった。絵を描くのは大好きだし、自分でも少しは自信があったけれど、それで生活するのは簡単ではないことを思い知らされたよ。どんな小さな仕事でも引き受けて、バイトしながらの切り詰めた生活だった」

「そうなんですね」

「正直なところ、会社辞めるんじゃなかったと後悔したこともあった」

「今はどうですか?」

「どんな仕事でも時間をかけて打ち込んで描いているうちに、少しずつ認知されるようになってきたので、生活に心配がないくらい程度かな。最近は広告業界に興味があるという大学生をバイトで雇えるくらいにはなった。集中して絵を描いていると、いろんなことから解放されて自由になれる」

「素敵ですね。やっぱり羨ましいです」

「自分で言うのも変だが、確かに素敵かも知れない。普通はつまらないと思うような小さな仕事でも、僕は夢中になると人が隣にいることを忘れてしまうくらいになる」

「南川さんの話を聞いて、この間テレビでたまたま見た卓球の石川佳純さんのインタビューのこと思い出しました」

「どういうこと?」

「はい。彼女は『好きなだけだと、うまくいかない時に嫌になってしまう。夢中になれることを見つけることが大事だと思います』と言っていました」

「なるほど。大事といえば最近僕も大事なことに気がついたんだ」

「何ですか、南川さんの大事なことって?」

「自分のイラストの技術的な面も大切だけれど、もっと大事なことは、見る人が楽しい気持ちや幸せな気持ち、時には不思議な気持ちや空想的な気持ちになるようなイラストを描きたいということだ」