【前回記事を読む】2日続けて宝飾店に立ち続ける中年男。若い女性に「昨日もいましたよね」と声をかけられ、20年前の出来事を打ち明けると……
第1章 銀座に降ったクリスマス
「え〜、20年も機会がなかったのですか?南川さんは大人の雰囲気で結構モテそうです」
「ずっと仕事が忙しかったからね。こちらからも聞いていいかな?」
「もちろんです。何でも聞いてください」
「いつも銀座T&Cで人を観察しているのかな?」
「いえ、私の場合は場所もまちまちですし、時期もクリスマスとは限りません」
「じゃあ、会えたのは偶然の巡り合わせということだ。イブとクリスマスに1人みたいだけど、付き合っている人はいないのか?」
「南川さん、その質問を若い女性にするのはアウトです」
「え、おじさんに独身かどうか聞くのはいいのに?」
「それはセーフということでお願いします」
「少し納得いかないけど、了解です。ところでつなみさんは大学生かな?」
「いえ、私は専門学校で絵の勉強をしています」
「絵本作家になりたいからですね」
「それが希望なのですが、自分の才能に自信が持てず、今は少し横道に逸れて美術史を勉強しています。今度は私が質問する番です。南川さんはどんな仕事をされていますか?」
「僕は会社員だったけれど、人とうまくやっていくのが苦手だったので、その女性と別れた後にしばらくして会社を辞めて、イラストを描くことを仕事にしました。今は1人で小さな広告事務所を運営しているよ」
「ということは、南川さんは社長兼イラストレーターですね。凄いです」