○約因は、契約成立時における履行行為(現在の履行=executed or present consideration)であっても、将来履行するという約束(将来の約因=executory or future consideration)でも構わないです。

約因とは、約束を与える者が受ける権利・利益であり、約束を受ける者の受ける不作為、不利益、出費、責任の事です。

物を買ってお金を払えば、契約が成立し同時に履行されますので、これが履行約因(executed consideration)です。

昔は、この履行約因しか認められなかったのですが、これでは現代社会の取引は成り立ちませんので、売買の約束と代金支払の約束=双務性があれば、相互に約因ありとなりました。

これを未履行約因(executory consideration)と言います。

但し、過去の約因は、契約の約因にはなりません。

また、既に存在する債務(例えば、以前からある借金等)も約因にはなりません。

従い、債務の一部免除を約束して、残金を支払うと言っても、残金は過去の約因となって、法律的効果は生じません。

○では、英国法を継承している米国ではどのように考えられているかですが、米国では州によって違います。

どうなっているかと言うと、書面による契約には全て約因があると推定する州や、書面による契約は約因が無くても有効とする州などです。形骸化しているところもあります。

“In consideration of $1.00”(「1ドルを対価として」)等と書く場合もあります。

勿論企業同士の契約は、寄付は別として、無償の贈与等は普通ありませんので対価関係がある契約が殆ど全てですから、約因があるのかどうかという争いは通常は起こりません。

○英国法と米国法の違いで重要なのは、英国では“Consideration”は、直接相手方から受けなければならないというルールがあります。

従って、第三者のためにする契約は認められませんが、米国では殆どの州で、第三者のためにする契約は有効です。

○契約変更と権利放棄:

英国では、契約変更・権利放棄は新たな契約とされますので、またConsiderationが必要です。

従って、売買契約を100ポンドで契約した後で、これを90ポンドに減額しても、あくまで価格は100ポンドです。

一方米国では、Considerationが無くても変更は可能であることがUCC§2-209に記載されています。