【前回記事を読む】訴訟大国アメリカで日本企業が直面しやすい法務リスクとは? 英文契約からM&A、独禁法、人事制度まで、体系的に解説!
第1章 商取引関連
1-2 英文契約のConsideration(約因)
英文契約書の前文・事実説明部分(Recital)の後に、“Now therefore,in consideration of premises and mutual covenants set forth herein,the parties here to agree as follows”等と記載します。
このConsiderationとは何かというのが今回のテーマです。
まず前提として、有効な契約の成立要件は何か、『英米契約法』(田中和夫著有斐閣1965年)によれば、以下の諸要件を必要としています。
①合意=申込(offer)と承諾(acceptance)の一致
②捺印証書(deed)又は約因(Consideration)
③法律的効果を発生させる意思
上記3つが基本です。
更に契約が完全に有効 = 無効・取消の原因の不存在のためには、以下が必要と記載されています。実務上はあまり考えなくてもよい事ですが、一応記載します。
④契約締結能力
⑤意思表示の真正:錯誤(mistake)=無効、取消原因として、詐欺(fraud)、善意不実表示(innocent misrepresentation)、強迫(duress)及び不当威圧(undue influence)
⑥目的の適法
⑦強行性に必要な要件
○英国の場合ですが、契約の成立には一定の様式に従った捺印証書(Contract indeed又はformal contract)又は約因=Considerationが必要となります。
約因のある契約をinformal contract,simple contract又はparol contract=口頭契約と呼ぶこともあります。
では約因とは何かですが、「対価」関係と考えるとわかりやすいです。
これがないと履行の強制即ちenforceableではないということになります。
しかし、約因がない契約でも、履行されると有効に権利の移転が生じます。従い、後になって無償贈与したものの返還は請求することができません。
約因のない契約は法的効力が無いというのは、それに基づいて請求し強制することができないという意味です。
○ではConsiderationの定義は何でしょうか? 正確に書いてみましょう。
Currie v. Misa(1875)の判例で述べられた定義です。「Avaluable consideration,in the sense of the law,may consist either in some right,interest,profit,or benefit accruing to the one party,or some forbearance,detriment,loss,or responsibility given,suffered,or undertaken by the other(Anson’s Law of Contractから)」
範囲は結構広いです。不作為、損失、責任や約束等も約因になります。