私はテストでは全ての教科でそつなく点を取っていたが、社会だけは「てる」を意識せざるを得なかった。
彼女は休み時間にも目をキラキラさせて歴史を語りたがるほどの、生粋の歴女だった。中間、期末に限らず、歴史と名の付くテストで結果が配られると、彼女は真っ先に私のところに点数を聞きにきた。そんなの彼女だけだ。
私がしぶしぶ点数を言うと「くっそーっ!」と握りしめていたテスト用紙を振り下ろした。
二点か三点、時にはもう少し離れていることもあったが、毎回わずかながら私のほうが上だった。
「てる」は「次は覚えてろ~」と笑顔でくやしそうにつぶやく。私は勝ったことを喜びつつも、背中まで迫ってきている彼女を恐れた。
ある日の放課後、みんなが帰った教室に二人。
私は無理やり彼女の歴史話に付き合わされていた。テストの点数で超えられなくても、歴史への思いでは負けていないことを証明したかったのだろう。
彼女は大きく膨らんだ学生鞄の中から、図書館のシールの貼られた歴史書を何冊も取り出した。
「うちも手の内を明かしたんやから、そっちも見せてよ」と迫ってきた。
私はたまたまその日に持ってきていたふだん使いの問題集と参考書を取り出して見せた。
彼女はそれを受け取ると、丁寧にページをめくった。ひととおり見終わって私に返したところで、急に伏し目がちになって言った。
「実はうち、母子家庭なんだ」