3 交流大会と初めての出張
ある日吉岡は、JITCOが主催する「交流大会」に出席するように上司から命じられた。
交流大会は毎年1回実施されており、この機会に実習生による「日本語作文コンクール」の表彰式も行われる。この大会には多くの監理団体や表彰の対象となる技能実習生が出席する。
表彰される技能実習生の作文の日本語や内容のレベルは高く、勉強していない大学生には書けないのではないかと思うほどの水準である。彼等の能力に吉岡はただただ感心するばかりだった。
交流大会後、別室でパーティが行われた。実習生とも日本語で話したが、概して彼等の日本語は堪能で、「日本に来てよかった」「日本が大好き」とのコメントを多く聞いた。
監理団体の職員と技能実習生が楽しく記念写真を撮影している場面にもたびたび遭遇した。
ここで1人の男性と名刺交換した。杉浦と名乗る男性は関西地方を中心に活動するS監理団体の常務理事だった。S監理団体は超優良監理団体として業界では知られており、日本語作文コンクールにも毎年、表彰される実習生を輩出している。
吉岡は杉浦常務理事から技能実習制度の現状や課題をいろいろと教えてもらい、最後は実習生との記念撮影にも参加させてもらった。
杉浦常務理事が言うには、S監理団体は技能実習生に対する教育訓練を重視しており、帰国後も技能実習で獲得した技能を活かせるよう、送り出し機関等と協力して、現地で就職のあっせんの援助もしているとのことである。
働き先は現地に進出した日系企業から地元資本の中小企業まで様々であり、定期的に実習生OB・OGのフォローアップもしていると聞いた。そこまで徹底的にやっている監理団体は珍しいらしい。
「日本政府は何か援助をしてくれているのですか」吉岡は聞いた。
「いいえ、日本政府はまったく関与していません。送り出し国の政府が支援してくれることはあります。日本サイドとしては純粋に民間の事業としてやっています」
帰宅途中に吉岡は感じた。
「外国人技能実習制度って、評論家やマスコミが言うほど悪いものではないのではないか」と。
一方で、日本政府は技能実習生のアフターケアをきちんとやっているのだろうかという疑問も生じた。