【前回の記事を読む】誕生日まであと3か月、何もしなければ私だけでなくばあやも死ぬ――だから、私は……
夢子
薫子は母の話やいねの打ち明けてくれた話や冥界からの使者という男の説明を聞いていなければ、小野篁の伝説など笑い飛ばすところだが、今は冥界があると信じて行動するしか道はなかった。
「面白そうやな。充実した夏休みになりそうや」
何も知らない樹は楽しそうだ。
薫子は冥界のことを調べていくうちに色々と知らなかったことが見えてきた。
閻魔の起源はインド・ヒンドゥー教で、初めての人間として神から生まれた子とされている。ヤマとヤミーという双子の兄妹として生まれ、妹のヤミーが兄に恋をして結婚をしたとされている。ヤマが中国、日本へ伝わるうちにエンマとなり閻魔となったようだ。
閻魔は冥界を支配する絶対王であるとともに仏教の地蔵菩薩の化身であるという説もある。大衆への布教の過程で地の神の化身であるという話は多い。天照大神を大日如来だというような本地垂迹(ほんじすいじゃく)という考えもある。
本来あの世に行った人間を救うのが地蔵菩薩の役目であるが、閻魔は死者を裁判にかけ六つの道に振り分けるという。天道はいわゆる天国、再び人間に生まれ変わる人間道、動物になる畜生道、戦い続ける阿修羅道、飢え苦しむ餓鬼道、そして地獄道の六道である。
冥界が死者の世界なのか、はたまた、この世と対をなすパラレルワールドなのかは分からない。小野篁が行き来をしたのが事実ならパラレルワールドなのであろう。また、冥界が仏教の世界だけでないとすれば古事記に登場する黄泉の国も冥界なのかという思いも浮かんでくる。
伊弉諾尊(いざなぎのみこと)が黄泉の国に行ったとされる記述が古事記にあるくらいなので、古代の人の中にはそのような経験をした人がいたのかも知れない。
キリスト教では主のもとに上っていくか地獄に落ちるからしい。イスラーム教では死後肉体と魂は一旦離れるが復活するという考えである。ヒンドゥー教では死後は輪廻転生すると信じられている。
結局、人はどこで生まれたかではなく、何を信じて生きてきたかによって死後の行き先が決まるということらしい。そうなると無神論者は一体どうなるのであろうかという疑問が頭をもたげるのだが。