「すごく嬉しい。お腹空いてたんです! 納め札もらっていただけますか?」と言うとにっこり笑って、「そいじゃ、ありがたくいただくとします! こんなもんで申し訳ないけど」と納め札を受け取ってくれた。

歩きながら食べた高菜ごはんのおにぎりは、コンビニおにぎりとは思えない美味しさだった。人の心が加わるとこんなにも味が変わるものなんだと。思いやりのもつ〈力〉のようなものを感じて、胸が熱くなる。

どれくらい同じような山の道を歩いただろうか、やっと町っぽくなった時、今夜の宿まで40分ほどの地点で、一見すると営業してるかどうか判別がつかない食堂が出てきた。入口らしい所から離れた木陰にベンチが置かれていたので、リュックを下ろして肩を休めていると、入口が開いて、三角巾を頭に巻いたおばあちゃんが出てきた。

「中で、休んでいかれなさい」「いや、食事は取らないので、申し訳ありません、ここで休ませていただければ」と言うと「いーから、いーから」とすすめてくださる。図々しくついて入ると、冷たいアイスコーヒーとおばあちゃんがおそらく自分用に蒸してあったのであろうさつまいもをお接待してくださった。

おばあちゃんは、「女の遍路さんで1人で回っておられるとは、偉いね~。女の人はトイレに困るじゃろう、出なくても出していきんさい。トイレはあそこやき」とトイレを指さす。女がトイレに困ることをよく知っているんだなと感心した。

美味しいお芋とアイスコーヒーをご馳走様でした! おばあちゃんは私が見えなくなるまで、手を合わせたり、手を振ったりしながら見送ってくれた。私はこんなふうに支えてもらってこそ、歩けているんだと思った。

私もおばあちゃんに手を合わせ、何度も振り返り手を振ってしまった。おばあちゃんのお接待で、元気が出たので、宿までラストスパート。無事に16時にチェックインできた。

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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