【前回の記事を読む】おじいさんと目が合ったので挨拶すると…震える手で200円を渡された。私が靴も靴下も脱いだ状態で、ボーっと座っている時だった。

第二章 土佐─修行の道場 長い長い道とお接待

19日目 2024年10月7日(月)

●気温:25℃ ●天気:晴れ ●予定距離:30km ●参拝目標:なし ●宿泊予定:ホテル海坊主

‌37番札所岩本寺の宿坊で目覚める。とても快適だがやはりお寺なので、朝6時から本堂で1時間、お経を読み、説法を受け、朝食後7時半に出発。

今日は次の札所が遠いので30km‌ ほど歩いて宿に向かう。高知は歩いて歩いて歩き倒す県。徳島が《発心の道場》と呼ばれるのに対し、高知は《修行の道場》と呼ばれる理由がよくわかる。ただ歩くだけなのに、いろいろ感じさせられ、考えさせられる。

コンビニも自販機もない長い道を延々と歩いていると、弘法大師の石像があった。写真を撮り、道すがらの小さな沢や彼岸花にスマホのシャッターを切っていると「おおーい、美香ちゃーん! なに、フラフラしてんだぁ~?! 真っ直ぐ歩け~!」と後ろから声がかかる。振り返るとまこちゃんだった。

しばらく歩いていると、道端から「冷たいものでも飲んでつかぁ~さい」と声をかけてくれたおじいさんがいた。自販機が見つからず喉が渇いていたので、ありがたくいただくことにした。先達のヨネちゃんに「お接待は断ってはいけない」と教わっていたからだ。

小さな冷蔵庫に様々な飲み物が冷やしてあり「好きなの飲んで、好きなの食べていきんしゃい」と言われ、チオビタドリンクと塩せんべいをいただいた。まこちゃんは三ツ矢サイダーをもらっていた。おじいさんは「この辺りは自販機一つないから、こんなことさせてもらってます」と言っていたのが印象的だ。

遍路道沿いに住む地元の方々の心遣いや優しさに、本当に頭が下がり、自分自身が恥ずかしくなる。おじいさんと3人で写真を撮り、お札を渡してお礼を言い、また歩き始めた。

まこちゃんとペースがずれてきた。私はトイレに行きたくなってペースが速くなっていた。今夜は同じホテル海坊主だと聞き「なんだ、一緒だね。トイレに行きたいから先に行く、また後でね!」と別れた。

女遍路が困るのはトイレだ。四国の遍路道はコンビニや公衆トイレが少なく、本当に困る。今日は特にそうで、一番近いコンビニまで5km‌もあった。トイレを我慢しながら蒸し暑い中を重い荷物を担いで歩くと涙が出てくる。わざわざこんな思いをしにきている自分に呆れるが、誰も助けてくれないのでひたすら歩くしかない。

やっと着いたローソンには「お遍路さん休憩所」と書かれた看板とベンチがあった。用を足し、おにぎりを食べ、疲れた足を休ませた。

四国にはローソンが非常に多く、次いでファミリーマート、ごくまれにセブン‒イレブンという印象だ。そんなことを考えながら、宿までのラスト10km‌ を歩き、ようやく到着した「ホテル海坊主」は古いがリゾートホテル風で、驚いたことにオーシャンビューの部屋だった。ベッドから海しか見えず、バスルームも広い。30km‌ も歩いた後のご褒美のような宿で、夕食も豪華、1泊2食で7300円は安過ぎる。数日泊まっていたいと思った。