【前回の記事を読む】「給食は農薬まみれなのよ! 娘に食べさせないで!」職員室で怒鳴り声をあげた母のせいで、友達を失い、給食も食べれなくなった。

2.幼さを入院させて

入学式の朝、制服姿で鏡の前に立ちながら思った。ここから変わる。変わると思わなければやってられなかった。楽しいこと全部放り投げて受験戦争に身を投じた意味が、そうじゃなきゃ消える。華やかな世界が待っていなければ割に合わない。純粋に、そう思っていた。

だが中学という場所は、小学校より残酷だった。

世界が広がれば広がるほど、自分がどれだけ異端かが鮮明に見えてくる。

「地球は平らだ」と言う母。給食を食べさせてもらえなかった小学校時代。鞄に隠れていたエナジードリンク。それらが1本の線で繋がった瞬間、胸の奥で何かが音を立てた。

氷が割れる音だった。

いじめは止まなかった。それどころか、陰湿さが増した。小学校のそれが無視と孤立なら、中学のそれは言葉と標的だ。噂が回る速さを舐めるな。狭いコミュニティの閉鎖性を、甘く見るな。

「あの子の家、変らしい」

「お母さん、給食センターに怒鳴り込んだんだって」

「ちょっとやばくない?」

廊下ですれ違うたびにくすくすと笑い声。授業中、後ろから消しゴムのかすが飛んできた。体育のグループ分けで誰も声をかけない。

提出物を出したら「触りたくない」と言われた。直接殴る言葉は飛んでこなかった。その代わり、ありとあらゆる方向から、じわじわと削られた。紙やすりで皮膚を撫でるように、毎日少しずつ。

その時初めて、はっきりと思った。

あの人は敵だ。

良い中学に入れば変わると言ったあの人が、その変化を自分の手で潰していた。私に植え付けた異端さのすべてが、あの人から来ていた。

良い子を演じることも、給食を食べられなかった日々も、平らな地球も、全部あの人が持ち込んだものだった。

それを怒りにしたかった。

でも怒りより先に来たのは、疲弊だった。

人間に疲れた。期待に疲れた。『変わる』という言葉が何度私を裏切ったか、数えることすらやめていた。