聞き覚えのある声。悠希さんが店頭に現れた。
「いつになったら、俊雄さんを下さいますの? 早くお式を挙げたいんです。彼はウェディングドレス姿が好きかしら。それとも――」
「あの、プライベートなお話にはお付き合いできかねます」
本気で結婚をする気でいるのが、ヤバさの度合いを表していた。この人には常識というのが通じないのだろうか。
「失礼。もしかして、亜紀ちゃんの彼氏のお見合い相手ですか?」
南君が話に入ってきた。このまま話をフェードアウトしていこうと思っていたというのに。
「はい。田中悠希と申します。俊雄さんとお見合いをして、意気投合し、この人となら幸せな家庭が築けると思ったんです。彼もそれに乗り気で……。後は沢村亜紀さんが彼を諦めてくれて、縁を切ってくれれば全てが丸く収まるんですが、なかなかこれが上手くいかなくて、悩んでいる次第です」
諦めないのは悠希さんでしょ!? 俊雄さんは私を想ってるんだから!
そう喉まで出かかった言葉を飲み込む。今は仕事の時間だし、悠希さんのペースに乗せられるのは避けないとと思ったからだ。
「悠希さんは美人さんだね。俺だったら放っておかないのに、その俊雄とかいう彼は焦らしてくるね」
「焦らし……ですか?」
「そう。恋人とわざと別れないで、君の恋心を煽ってるんだよ」
「それが彼にとってどんなメリットがあるのでしょうか?」
「もっと彼が欲しくなってるでしょ? それが彼の狙い」
「まぁ。そんな駆け引きになっていたのですね。では、私はどうすれば良いのでしょうか?」
「それは、少し距離を置いてみたら? そうしたら、彼は慌てると思う」
「慌てたら、どうなるのですか?」
「君にアプローチしてくるよ」
「まぁ。目から鱗って言うのはこういう時に使う台詞だわ。教えていただいてありがとうございます。お名前を頂戴してもよろしいでしょうか?」
「高岡南だよ。何でも相談してよ。これ、連絡先」
そう言って、南君がメモを悠希さんに渡した。
どういうつもり? 南君、悠希さんの味方になったの!?
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突然、彼氏のお見合い相手である社長令嬢から、『貴女とお話したい事があります』と電話が来た
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