【前回の記事を読む】大好きな兄がおかしくなった…絶対何かあるとは思っていたが、兄が放った一言に時が止まった。兄はとても幸せそうな顔で…
4「一番幸せになってほしい人 〜不思議なオーラ編 福涙〜」
その後、温泉に浸かりながら私は母に言った。
「来られて良かった! 父さんにお願いしてみて本当に良かった! 言ってみるもんだね! ありがとうね」と言うと、母は、
「お兄ちゃんも一緒に来られて良かったね」と、ニコニコしていた。
なんだろう? やっぱり変な違和感を感じる……。
母は元々優しい。今は、もっと優しい。言葉が足りなくてたまに傷付くけど…。
父さん、母さん、何か知っているの? 私はこれが、最後の家族旅行になると思った。良い流れが来ているとしか思えなかった。
きっと、兄の生活リズムの中にスッと何の違和感も無く入って来た、誰かが居る。その存在が、うちの家族に優しくて穏やかで、安心をくれているのだと思った。だから、旅行から帰ってすぐ、
「結婚しようと思ってさ!」と、聞いた時は、やっとその言葉が本人から聞けて本当に嬉しかった。
そして初めて知った事があった。親はもう既に会っていた。
彼女はウチに来た事が二回もあると言うのだ。私は、
「え!? いつ!? どんな人!? なんで教えてくれなかったの!?」と、驚きを隠せなかった。
普段生活しているこの家に、いつの間にか来ていたんだ……どうして気付けなかったのだろう。
きっと、兄と似た空気の持ち主なのだと思った。母は、
「別に隠してた訳じゃないよ。お兄ちゃんが直接伝えるって言ってたんだよ。妹がいる事は相手に伝わってるみたいだし、きっと相手の方が気にしてるだろうから。それに来たのは土日だったから」と。
私は、確かに土日がメインの仕事をしているけど、頭の中で整理ができず、驚きを隠せなかった。私だけ何も知らず、ただの妄想にふけていたんだ……。
グレーゾーンの時間を随分と長く取られてしまった。腑に落ちず、仲間外れにされた気分だった。
私は自分の部屋に閉じこもって一人で泣いた。
すると、コンコン! と、ドアをノックされた。
「おーい!」と、兄の声がした。
「なーに?」と、涙を拭いて返事をした。
「今、ちょっと良い?」と、変わらず優しい声だった。
「うん……」と、言うと、兄は祝福した私に、
「さっきはありがとうな! 三つ年下の人だから、よろしくね! 仲良くしてあげてね」と、言ってきた。私と同じ年か……。
「うん、分かった」と、返事をした。
兄はいよいよ結婚するんだ。モヤモヤとした期間が長かったけど、やっぱり嬉しかった。泣きながら、ただただ首を縦に振った私に兄は、
「俺は遠くに行ったりしないから。それは安心して。結婚しても、ちょこちょこ顔出すから。あ! 父さん、母さんの事、何かあったらすぐに教えてね。あと……」と、少し間があった。
「あと、何?」と聞くと、最後まで私に何も伝えて来なかった理由が分かった。