全く悪びれずに言うので、状況を脳内で整理するのに時間がかかってしまった。つまり、この女性は俊雄さんのお見合い相手の悠希さんで、俊雄さんを『くれ』と言っているんだと分かると、沸々と怒りが湧いてきた。

「そんな事できません! 大体、俊雄さんは物じゃないんです! お金で解決とかあり得ないですから!」

「お金、貰っておくと良いと思うの。だって、俊雄さんと私は……ふふ、もう只ならぬ関係なんですもの」

何? 何なの? もしかして、俊雄さんと……関係を持ったって言いたいの!?

もう頭の中はパニックに陥っていた。

五百万で俊雄さんと縁を切れと言う社長と悠希さん。これまで人間関係をお金で解決してきたような口ぶりに思えた。大体、お金で彼氏を渡す彼女なんて、いるはずがない。相手を想っているのならば。

「どうした? 亜紀ちゃん」

長澤さんが、私が声を荒げているのを聞きつけてやって来た。

「この方達は?」

「……彼氏の――」

「ああ、いや、すまんね。仕事中に。また、ゆっくり話そう」

田中社長が悠希さんの背中を押し、お店から出て行った。

「何? トラブル?」

「すみません。彼氏の事で色々と言われただけです。ご迷惑をお掛けしました」

「相談に乗るよ?」

「ちょっと……特殊な事なので、説明し難いです。あ、もうお昼のセールの時間ですね。POPを出してきます!」

急いでバックヤードに行き、セールと書かれたPOPを手に持ち、店頭にそれを設置した。

「『二十OFF』なんですの?」

聞き覚えのある声……悠希さんだ。てっきり父親と一緒に帰ったと思って、ホッとしていただけに驚いた。

「今はお客として来たの。俊雄さんに似合いそうな服はどれかしら? 貴女なら詳しいわよね?」

喧嘩を売ってるのかと思えてしまう。

 

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