大学に慣れてきた頃を見計らって、利佳は思い切って告白した。彼から返ってきた答えはYESで、利佳はたちまち舞い上がった。早々に彼氏をゲットし、明るい大学生活が始まったのだった。

だが、そんな楽しい時間は長くは続かなかった。付き合い始めて一年が過ぎた頃、彼に好きな人ができたのだ。同じサークルの後輩だった。「別れて欲しい」あろうことか、大学の構内で、彼から言われた言葉だった。利佳は、楽しい大学生活から一転、奈落の底へと突き落とされた。

傷ついた利佳は、その日の帰り道、どうやって電車に乗ったのかはわからなかった。恐らく電車の中でも泣いていただろう。そんな利佳に、自分のハンカチを手渡して優しく声をかけてくれたのが、悦子だった。

利佳は、悦子の隣に座ると、すぐに笑顔を取り戻した。それまで悲しんでいた姿が嘘だったかのように、利佳は自分のことを話し始めた。そんな利佳の話を、初対面にもかかわらず、悦子は何も言わずに聞いてくれた。

訊けば、悦子も同じ大学に通っていた。利佳は経済学部、悦子は商学部と、学部こそ違えど、同じ年に大学に入ったことがわかった。途中まで、帰る電車が同じだったことも、二人の距離を縮めることにつながった。

「いや、そうじゃなくて、今やってる万博の方だよ」

「今やってるって、大阪の海の近くの万博?」

どうも話がかみ合わない。考えてみれば、大阪に『万博』と名前のつく場所が二つもあるのだ。大阪に住んでいる人間でも、間違ってしまうほどだった。

「そう、夢洲でやっている万博ね。スマホで簡単にチケットが取れるみたいだから、一緒に行ってくれるなら、悦子の分も取っておくけど……」

「へぇ、チケット、簡単に取れるんだ。でも、日曜日だから、混んでるんじゃないの?」

悦子がそう訊いたのは、連日のテレビのニュースで、長蛇の列を作る人々の姿が映っているのを見たからだろう。インタビューを受けた人は、入場するだけなのに、何時間も待っていると、早くも疲れた表情を浮かべながら語っていた。