【Q2】

企業にはなぜCSR/サステナビリティへの取り組みが必要なのでしょうか?

CSR/サステナビリティに取り組まないからといって法的な罰則はありませんよね?

【A2】

(この質問への回答は主に大企業を対象としたものですが、中小企業にも関連します)

おっしゃる通り、CSR/サステナビリティに取り組まないこと自体に法的な罰則はありません。しかし、CSR/サステナビリティへの取り組みは、企業の「価値」を大きく左右する重要な要素となっています。

その背景には、20世紀から21世紀への移行期に起きた「企業価値に対する評価軸の変化」というパラダイム・シフトがあります。

かつては「企業の価値=市場的価値(株価、売上、利益など)」という考え方が一般的でした。つまり、高い業績を上げ、株主に高い配当を行う経済的パフォーマンスの高い企業が、「価値の高い企業」とされていたのです。

そのため中には、「業績のためなら環境や人権は二の次」という企業も多かったのです。しかし、環境破壊や人権侵害といった社会課題の顕在化に伴い、企業の「社会的価値」がより重視されるようになりました。(1)

そして現在では「企業の価値=市場的価値×社会的価値」という、掛け算の関係で捉えられるようになっています。掛け算なのでどちらか一方がゼロなら、もう一方がどんなに高くても企業の価値はゼロになってしまいます。こうしたことから、社会的価値への注目が高まっているのです。

 


(1)20世紀末(特に1990年代後半)には、複数の国際的な大企業による深刻な不祥事が起きました。これらの不祥事は、グローバル化した企業活動がもたらす負の側面を浮き彫りにし、企業の社会的責任(CSR)が強く問われるようになり、企業の社会的価値がより重要視されるきっかけになりました。代表的な事例は以下の通りです。 

・シェル(Shell)によるブレント・スパー廃棄問題とナイジェリアでの人権侵害

1995年、石油大手シェルは北海油田の老朽化した石油プラットフォーム「ブレント・スパー」を海洋投棄しようと計画し、激しい国際的な非難を浴びました。

環境団体グリーンピースによる抗議活動が大規模な不買運動に発展し、最終的にシェルは計画を撤回しました。

また同時期、シェルはナイジェリアでの石油採掘活動において環境汚染を引き起こし、これに抗議したオゴニ人の活動家がナイジェリア政府によって処刑された問題(ケン・サロ=ウィワ事件)で、政府への圧力不足や共謀を疑われ、国際的な批判に直面しました。

・ナイキ(Nike)などによる児童労働・低賃金問題

1990年代後半、スポーツ用品メーカーのナイキや他のアパレル企業は、東南アジア諸国の委託工場における児童労働や劣悪な労働環境、低賃金(スウェットショップ)が告発され、大規模な不買運動の標的となりました。

これは企業のサプライチェーンにおける人権問題として大きく取り上げられ、企業の社会的責任に関する議論を加速させました。

・モンサント(Monsanto)による遺伝子組み換え作物(GMO)や農薬を巡る問題

20世紀末にかけて、バイオテクノロジー企業モンサントは、遺伝子組み換え作物や強力な農薬「ラウンドアップ」の普及を巡り、環境への影響や健康被害、小規模農家の権利侵害といった点で、世界中の環境保護団体や市民団体から激しい抗議を受けました。

・エンロン(Enron)の会計不正事件

2000年代初頭に表面化しますが、その不正会計は20世紀末から行われていました。アメリカの大手エネルギー取引会社エンロンは、複雑なオフバランス取引や特別目的事業体(SPE)を利用して負債を隠し、利益を水増ししていました。

2001年の経営破綻は、アメリカ史上最大の企業倒産の一つとなり、会計士や格付け会社、規制当局を巻き込んだ大規模な企業倫理の崩壊として知られています。

 

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