第一部:売春の芸術
「引用家たちに対する青年の憎悪について。引用家は彼らにとって敵である。」
「〈海賊〉、〈盗作者〉フォルグの肖像を忘れないこと。」
(『ボードレール全集』ボードレール著、阿部良雄訳、筑摩書房1993年 赤裸の心36、断章64)
序
村上春樹は『ノルウェイの森』(講談社2004)で、「作品の正当な評価は作家の死後30年経たねば不可能である」、と語っている。しかし死後130年以上経とうとしているボードレールに対して、今さら何を語ることがあろうか。
そうわかってはいても、なお問わずにはいられない。その想いは、次の言葉との遭遇から始まる。
「芸術とは何か。売春」(『ボードレール全集』火箭Ⅰ、断章1)
女性を想起させ、恋愛、性交、悪徳、犯罪……そしてみだらさ、いかがわしさや神秘まで喚起させる言葉「売春」がART(アート)(アール・芸術・技法)という言葉となぜ出会うこととなったか。それが本書の趣旨である。
方法は以下の通りとする。
①「売春」をキーワードにボードレールの文脈に沿って、特に『火箭』『赤裸の心』『パリの憂鬱』の作品群を中心に解釈を行う。
②当時の政治・思想の流れを考慮する。
③事前に結論を用意せず、出たとこ勝負する。
さあ、書き始めよう。語る言葉がなくなるまで。