「三隅さんもモテはるもんなあ」
「当然だよ。あはははは……」
三隅はまた大笑いした。面会時間は大幅に超過して訪問は終了した。
「鳥飼さん、三隅さんはえらいご機嫌でしたわ。別件があって食事に行かれへんのがほんまに残念そうやった」
一次会は北浜にある老舗の鰻屋でご馳走になり、二次会は新地にある高級クラブ「グランデ」に案内されていた。
「三隅さんと会食する機会をまた作ってくれよ」「いやー、こちらからお願いしますわ。川村さんじゃ、こうはいかへんので」
「川村さんで思い出した。小林君、もう解放してやるよ」
小林は申し訳なさそうに、頭を何度も下げながら店を出ていった。
一人残った鳥飼は、若い女の子に囲まれながら他愛もない話を楽しんでいたが、暫くすると、こらえようもない、どす黒い感情が込み上げてきた。酒と猥雑な雰囲気が鳥飼の中のフォントスに火をつけてしまった。
鳥飼は日付が変わる少し前にクラブを出た。今年の近畿地方の梅雨入りは遅いと言われていたが、いつのまにか雨が降っていた。店のママが車を呼ぶと言うのを制し、安物のビニール傘を借りて通りに出た。高級クラブと安物のビニール傘の取り合わせに思わず笑ってしまったが、その笑いと一緒にこらえ切れない衝動が腹の底から突き上がってきた。
その高級クラブは堂島上通りの西側にあった。店を出て直ぐに右に折れ、ANAホテルを右に見て通り過ぎ、中之島ガーデンブリッジの手前に来た。阪神高速の高架下にある堂島公園のベンチで、雨を避けながら二人の浮浪者がビールで酒盛りをしていた。
新地のどこかの店で客の飲み残しのビール瓶を集めてきたのだろう。鳥飼と二人の浮浪者は三十メートルぐらい離れていたが、強烈な街灯の明かりが、雨の深夜の闇の中に彼らを鮮明に浮かび上がらせていた。この時、鳥飼のどす黒い感情が爆発した。
鳥飼に背を向けてベンチに座っている、手前の浮浪者に念を集中した。次の瞬間、その浮浪者はふらつきながら立ち上がり、ビール瓶を落とすと、胸をかきむしり苦しみ始めた。少しの間をおいて、「ボン」という大きな音とともに浮浪者は爆発し、粉々になった肉や骨とおびただしい血が辺り一面に飛び散った。