なにせ小さな島なものだから、すぐ波に呑まれてしまう。

少しでも強い波が来たら、組合から島に設置されたスピーカーを通して避難勧告が出されるようになっていた。

ある日、いつもよりも大波がくるということで、クロ子たちは母親と共に、家に戸を立てて籠っていた。

すると、異変に気が付いた。「そういえばお父さん、いなくない?」そんな馬鹿な。しかし、家のどこを探してもいない。

今日は組合にも行ってないはず。え? まさか…… 気付けば、クロ吉愛用のサーフボードもない。

そう、クロ吉はサーフィンが趣味なのだ。

そういえば最近、クロ吉が「最近、いい波が来ない」と嘆いていた。

「次にでかい波が来たら、俺は必ず乗る」

……そう呟いていたことも、ふと思い出す。しばらくすると、島にスピーカーの爆音が響き渡った。

「クロ田クロ吉! 何をやっている! ただちに避難しなさい! クロ田クロ吉! 即刻! 家に帰りなさい! クロ田クロ吉! 何をするつもりだ! なんでサーフボードなんか持っている! おい! 馬鹿なことはやめなさい! クロ田クロ吉! 早まるのはやめなさい! クロ田クロ吉! 聞いているのか! やめろ! 早く帰れ! クロ田クロ吉……」

かつてないほどに父の名が島中に向けて連呼されるのを、クロ子はわけのわからない気持ちで聞いていた。

 

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