美奈子は上着のポケットの中を探し出した。おそらくメモか何かを探しているのだろうが、なかなか見つからなくて焦っているようだった。ふと見ると応接セットのガラスのテーブルの下に1枚の紙切れが落ちていた。

「あの、これじゃないですか?」

俺はテーブルの下に手を伸ばして紙を拾い、彼女に手渡してやった。

〈ナイト登場! 僕が代わりたい〉

「ああ、これです。ありがとうございます!」

彼女は驚くほど大きな声でお礼を言ってからメモに書いてあった公約を読み上げた。

「私の一番に訴えたいことは、抜本的な花粉対策についてです」

「なんだ? その程度のことを暗記してこなかったのかよ」

先ほど田乃郷の発言時に口を挟んだ和服の候補者がボソリと言った。

〈誰? あいつ感じ悪いな〉

「まあ、いいじゃないですか堂谷さん」

〈堂谷だってさ。怖い人かな?〉

「それじゃあ小賀津さん、その点について詳細にお願いします」

「ハイ、まず国有林のスギやヒノキを伐採することを提案します」

あまりに大胆な発想に誰かが「ブッ!」とジュースを吹いた。

〈出ました。トンデモ発言! ラノベのヒロインみたいにぶっ飛んだキャラだな〉

〈その前に東京に国有林なんてあるのかよ〉

〈確か八王子の方にあったと思うぞ〉

「そりゃまあ、抜本的な解決法だわね。でも国有林は防災や建築用の木材、そして水の供給など大変重要な働きをしているのよ。それを切っちゃうの?」

大学教授の真奈美が笑いながら言った。

「それは分かっています。ですから私は段階的に針葉樹の森を広葉樹の森に変えていくことを提案しています」

 

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