第1章 俺、都知事選に出ちゃいました。佐内雅彦の挑戦!

当選確率0パーセント 「失うものは何もない」

日本の小学生が、将来なりたいと考える職業で、ユーチューバーは圧倒的な人気がある。資格もいらず誰でも自称するだけで、その日からなれる商売だ。

自宅のパソコンから手軽に配信してお金儲けができるので、朝早く起きて満員電車に押し込められる通勤地獄に遭うこともない。

ブラックな職場で嫌な上司に媚びる必要もなければ顧客から無理難題を押し付けられて鬱(うつ)病になることもない。

しかしそれは、社会経験のない子供らしい発想から来るもので、大人から見ればユーチューバーとして成功するのが極めて難しいことぐらい容易に推察できる。

一人でチャンネルを立ち上げ、たまたまそれを見てくれた人に登録してもらい視聴者数を増やしてお金を稼ぐ。

単純なようだが、よほど才能に恵まれない限り公認会計士や弁護士、あるいはタレントとして成功するのと同等か、もしくははるかに難しい職業だ。

とはいえ数万人に一人、それを成し遂げる成功者も確かに存在する。山手線内にあるマンションの高層階から、毎日自身のユーチューブチャンネルで発信する多比余健太(たひとけんた)という男もその一人だ。

リビングルームだけで20畳ほどある。分譲だと相場で2億を超えるだろう。このマンションの一室を所有しているのだとすればかなりの資産家だし、賃貸しだとしても月々の賃料を支払っていくには相当な収益が必要だ。