【前回の記事を読む】雨の夜の森に響く子ガエルの歌と笑い声、小さな読者に想像の世界を広げる短編集【児童書】

第1章 森の動物たち

若者ヒョウの歓迎会

小さい皆さん、こんにちは。

今日は、若者ヒョウの歓迎会のお話をします。

生まれ故郷をあとにして、見知らぬ土地で苦労した若者ヒョウに、故郷で待っていたものは何だったのでしょう。

ある森に、一匹の雄の子ヒョウが生まれました。黒い毛の、みるからに可愛らしい子ヒョウでした。

子ヒョウは生まれて何か月かすると、森を離れて、見知らぬ土地で生きていかねばなりませんでした。子ヒョウの父親が、この森の動物たちを取り仕切る王様の役割を果たしていたので、父親の跡を継いで、立派なリーダーになるためには、そうしなければならない、という親の意向があったのです。

子ヒョウの旅立ちの日、森の動物たちは皆で子ヒョウを見送りました。

「たくましくなって、帰っておいで」

皆は言いました。子ヒョウは心細さに、足元もふらつく思いでしたが、それでも真っ直ぐ顔を上に向けて、歩いて行きました。

それからの子ヒョウの苦労はとうてい言葉で言いつくせないものでしたが、何年もたつとすっかりたくましくなって、親譲りの黒い体をピカピカに光らせて、いかにも強そうな堂々たる若者ヒョウになっていました。

親から言われていた帰りの日時も近づいてきていましたので、その若者ヒョウは帰ることにしました。胸をはずませ、目を輝かせて、若者ヒョウは親の待つ森へ向かいました。

でも、森の入り口に帰りつくと、喜んで皆が出迎えてくれるものと思ったのに、迎えてくれるものは誰もなく、寂しい帰郷になりました。

森の中央の広場に来ると、動物たちは集まっていて、帰ってきた若者ヒョウに冷たい目を向けていました。

そのとき若者ヒョウは何もかも分かりました。自分がいない間に、森を統率していた自分の親が、王様の役割を、自分の片腕としていた虎に取って代わられていたのです。そして今はずっと下の地位に追い落とされているようでした。