【前回の記事を読む】最悪の場合は心停止…「腎不全」は自覚症状にも乏しく、突然死のリスクが高い。心臓のポンプ機能が低下する前にできる選択は…

第1章 腎臓病は静かに進行する国民病

透析医療が直面する課題とは?

日本では透析医療の社会基盤ができ上がっていますから、患者は透析を受けやすい環境にあります。

しかし、透析医療は腎臓の働きの一部を代償しているに過ぎないため、医学的には以下のような課題が存在します。

間欠的な治療

腎臓は24時間休みなく働いていますが、透析は間欠的な治療法です(39ページの図)。そのため、治療と治療の間に体内に毒素や余分な水分が蓄積されます。

特に、透析の日の前後は体内の毒素の蓄積とその急激な解消により、患者は不快感や体調不良を感じることが多くなります。

 

透析の限界

透析は腎臓ほどの毒素除去能力を持っていません。

例えば、腎臓には小さな分子から大きな分子まで効率的に除去する能力がありますが、透析では大きな分子の除去が不十分です。そのため、透析患者は長期的に見て、これらの毒素が体内に蓄積し、合併症を引き起こすリスクが高まります。

栄養の損失

透析は体に必要なタンパク質まで除去してしまうことがあります。特に高齢者や体力が低下している患者では、透析により必要なタンパク質が失われ、体力が落ちることがあります。

そのため、十分な栄養摂取が必要ですが、カリウムやリンなどの過剰摂取に気をつけなければいけないため、食事管理が難しくなります。

治療の身体的、精神的負担

透析治療は患者にとって身体的、精神的な負担となることがあります。透析を受けるために定期的に通院しなければならず、治療中は長時間ベッドに横になる必要があります。このため、自由が制限され、生活の質が低下します。

以上の透析の医学的な課題は患者の生存率に悪い影響を与えます。腎移植と透析の生存率を比較すると、腎移植患者の10年生存率は約80%に対し、透析患者のそれは約40%とされています。

医学的な課題以外にも、透析医療は社会的な課題も抱えています。

大量の医療廃棄物の排出問題や自然災害時の治療体制の脆弱性など、解決すべき課題があります。また、経済的負担に関しても、透析医療にかかる費用は高額なので、国の社会保障費を圧迫する要因にもなっていきます。

第1章のまとめ

❶腎臓は体のバランスを保つための必須の臓器である

❷腎臓病は症状が出にくいが、確実に進行していく

❸腎臓病が進行すると腎不全になり、命の危険がある

❹日本の透析医療は非常に発達しているが、医学的、社会的な課題もある