腎臓病とがんはともに日本人に多い病です。
この全く異なる二つの病気の間には意外な関係がありました。
はじめに
「腎臓病とがん」という言葉を聞いたとき、皆さんはどんなことを思い浮かべますか? それぞれの病気については少し知識があるかもしれませんが、この二つには何か関連性があるのかと疑問に思う方も多いでしょう。
「腎臓病とがん」のそれぞれの専門の学会でもお互いの病気の関係についてあまり議論されることはありません。
つまり、この二つの病気はそれぐらい縁のない病気と言えるでしょう。
私が日々診療している腎臓病や腎不全は、日本人に多く見られる病気であり、新たな国民病と言われています。
腎臓病は、初期の段階では自覚症状がほとんどありません。気づかないまま進行してしまい、腎不全と診断されるともう元の健康な腎臓には戻れません。そして、末期腎不全になると、腎移植か透析が必要になります。
日本では、現在約35万人の方が透析を受けています。
一方、がんも日本人がかかりやすい病気であり、40年以上ずっと日本人の死因の第1位です。がんも、初期の段階ではほとんど症状が現れません。
しかし、適切な治療を受けなければ、がんが転移してしまい、命が脅かされます。がんは進行しないと症状が出にくいため、初診の際に既に転移した状態で見つかることもあります。
「腎臓病とがん」は全く異なる病ですが、両者とも日本人に多く、気づかないうちに進行し致命的になるという点ではよく似ています。
以前から、腎不全になるとがんになりやすい、また、腎不全の患者はがんで亡くなりやすいと言われています。
この理由は腎臓の機能が低下すると体に老廃物が溜まるため、それががんを引き起こすのではないかと考えられているからです。
もしこの仮説が本当に正しいなら、腎臓病の患者さんは、いつか自分もがんになるのではないか、がんで死ぬのではないかと心配になるでしょう。