私がこの本を書くきっかけになったのは、上記の仮説に疑問を持ったからでした。腎臓病の医療の現場で働いていると、思いの外、がんの患者に遭遇することが少ないのです。

よく調べてみると、実際には腎不全の患者さんは一部のがんを除いてがんになることは少ないことがわかりました。

さらに、腎不全の患者さんはがんで亡くなることも非常に少ないこともわかりました。それでは、なぜ、腎不全はがんになりやすいと信じられているのでしょうか? そして、実際は、なぜ、腎不全の患者さんはがんで亡くなることが少ないのでしょうか?

私は、腎不全、泌尿器疾患を専門とする臨床の医師であり、さらに研究者としても25年以上がんの基礎研究に携わってきました。

この本は、「腎臓病とがん」のそれぞれの病気の特徴について概説し、腎臓病ががんに与える影響についてわかりやすく解説したものです。

腎臓は体のバランスを保つために重要な役割を果たしていますが、腎不全になると、正常な細胞だけでなく、がん細胞にも悪い影響を及ぼします。

私は、従来の仮説とは異なり、腎不全ががんの発生や進行を抑えている可能性があると考えています。

この本を読むことで、腎臓病の治療を受けている方ががんと診断された場合でも、それほど怖がらなくてもいいことがわかるでしょう。

腎臓病や透析には意外なメリットがあることも知っていただきたいのです。また、この本では日本の腎不全医療の素晴らしさと同時に、多くの問題点についても触れています。

透析と腎移植の医療の実態を海外と比較した上で、日本の腎不全医療の現在と未来についての私見を、最後に補遺として加えさせていただきました。ぜひ最後まで読んでいただければと思います。

本書が腎臓病患者や透析患者、そのご家族だけでなく、医師や医療従事者にも役立つ手引きとなることを願っています。

また、腎臓病やがんの研究者にとっても、本書が議論を呼ぶきっかけになり、新たな治療法の開発につながることを期待しています。

 

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