「おじさん、昨日もいましたよね」

振り返ると昨日の女性らしい人が立っていた。今日は黒のコートなので確信はないけれど、同じ人だと思った。

「昨日は赤いコートだったかな?」

「そうです。何度か目が合いましたね。2日続けてT&Cで長い時間立っていらっしゃるのは、どうしてですか?」

「いや、クリスマスにプレゼントを買いに来る人たちを見ていると何となく幸せな気分になるからだよ。そんなこと知りたくて声をかけてくれたのか? 世の中には変な人や危ない人がいるから気をつける方がいいよ」

「おじさんも少し変です」

「その変な知らないおじさんに声をかけてくるお嬢さんもね」

夏人は不思議な子だなと思いながら、抗えないような流れを感じた。彼の目を見つめるその子の大きな瞳は少しだけ茶色がかった深い黒色をしていた。

「確かにそうですね。ところでご自身では誰かにプレゼントを買われないのですか?」

「いや、今はプレゼントをあげる人もいないから」

「今は、ということは、前に誰かにプレゼント買ったことがあるのですか?」

「若い頃に好きだった女性にT&Cのネックレスをプレゼントしたことがある。もう20年前のことだけど」

「ご迷惑じゃなかったら、もっとお話をお伺いしてもいいですか?」

「別にいいけれど、どうして僕みたいなおじさんに興味があるのかな?」

「じつは私、絵本作家になりたくていろんな人を観察しながら構想を練っているのです。おじさんの話がすごく参考になりそうだなって思って」

「なるほどね」