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第1章 銀座に降ったクリスマス

夕海のことを気にしながら、夏人は翌日も銀座に出かけた。

今日はクリスマスだ。夕海と付き合っていた頃、クリスマスイブに銀座に出かけてT&Cに行くのが習慣になった。

イブに行けなかった年はクリスマスの日に2人で行った。夏人はブランド品にはあまり興味はない。でも夕海と付き合っていた頃、2人で観た古い映画『ティファニーで朝食を』の中のオードリーヘップバーンがあまりにも魅力的だったので、夏人にとってT&Cだけは特別なブランドとなった。

夕海には言わなかったけれど、映画の中でヘップバーン演じるホリーの奔放さと可愛さがショートヘアの夕海に似ていた。

夏人は夕海と別れてからも、毎年クリスマスには銀座T&Cに来て人の流れを観察し続けている。夕海と一緒だった頃と違うのは、クリスマスイブとクリスマスの2日とも銀座T&Cに行くことだ。

ここで人の流れを観察している時、夏人は無意識に夕海を捜していた。電話やメールではなく、偶然ばったり会うことができれば何か変わるかも知れないと夏人は考えていた。

夕海と2人で人の流れを見ていた時と違って、今のT&Cのクリスマスの様子は遠い昔に夕海と一緒にいて幸せだった頃への郷愁を彼にもたらしている。

翌日、クリスマスの日もT&Cを訪れた夏人はいつものように長いあいだ人の流れを見ていた。でも昨日の赤いコートを着た女性はいなかった。

帰ろうとした時、後ろから声をかけられた。