俺は

『制服警官のことか?』

と思い

「ああ! その警官達は現場保存のために急行してもらいました。私は現場調査のために後から来まして……一応こちらの受付で許可を頂きまして、現場とされる控室を調べさせて貰いました」

途端に恰幅のいい男の顔が曇る。男は

「……そうですか。でも刑事さん?でいいのかな? それなら受付ではなく社長の私に直接許可を取ってほしかったなぁ……」

俺は

『この男が社長か? あの表情……何か知っているのか?』

俺は

「申し訳ありません。何しろこの手の捜査は初動が大事でして……先ずは現場に……」

そこまで言うと、社長と名乗った男は立ち上がり、机の引き出しから名刺を取り出し俺に差し出した。

「申し遅れました。私がライブハウスを経営しております社長の清水智哉と申します」

俺は名刺を受け取り、スーツの内ポケットから警察バッジを取り出し、開いて男に見せた。男はバッジを見た後

「これが警察バッジ……ですか? 初めて見ました」

俺はこの手の質問は初めてではないのでいつものように

「バッジを見た人は皆さんそう言いますよ。見ようと思っても見られる物ではないですが……」

俺は警察バッジをしまい、改めて尋ねる。

「今日こちらのライブを見に来た人から『ライブの後、サインを貰おうと控室に行ったところそこで死体を見た』と相談を受けましてこうして駆けつけた訳ですが?」

男は

「死体? そんなものあるわけがないですよ! そもそも観客はライブの後だろうと控室には入って来られません! 内のスタッフが常に会場や廊下にいますから」

俺は

「その相談者が言うには控室に行くまでの間、誰にも会わなかった……と」

男の顔が再び曇る。俺は

(質問を変えてみるか?)

そう考え

「ちなみに今日のライブ出演者は誰ですか?」

男は

「刑事さんに言ってわかるかなぁ?神木奏馬(かみきそうま)という若手アイドルですよ。駆け出しではあるんですけど、ちゃんと事務所にも所属しておりまして……」

俺は

「事務所というと芸能事務所ですか?」

男は

「そうです。芸能界では誰もが知っている事務所でして『桜手(おうて)芸能事務所』ですよ」

俺は芸能関係には疎いので聴いてみた。

「あの……それほどの事務所なら地上波とか、ライブでももう少し規模の大きいライブからデビューさせるのでは?」