〈すっかり見透かされている〉

いよいよ間違いなく楽園に住む聖女のもとへ来てしまったに違いないと観念しかけたとき、聖女の佳容はパールの石板に刻まれた美人画のように気品に溢れ、二度微笑みを漏らした。

リフィエラは、花の香と共にそばへ歩み寄り、金と白金で細工された櫛に琅かん翡翠と紅緋の瑪瑙を嵌めた宝飾櫛で、しっとり潤うジュランの黒髪を流麗に梳いた。

「誠実に生きてきたあなたを死なせはしないわ」

慈悲深い慰めに胸は詰まったが、精魂尽きたジュランには、〈真面目に生きたらこの有様よ〉としかつぶやけなかった。

聖女は凛として、天上の栄えを映す顔に絢爛たる不敵な笑みを薔薇の如く薫り立たせていた。

「地球の悪魔は善良な人を苦しめたがるものなのね」

さらりと言ってのける華麗な聖女は、いったいどこから来た何者なのだろうか――謎はますます迷宮に入り込んでいった。

「でも最後はどうなるか、わたしは確かめに来たのよ。楽しみだわ」

揺るぎない信念に支えられた麗人の正体は、やがて明らかになるだろう――そう期待してジュランは目を閉じた。

この上なく心地よく、細胞が蘇生していく確かな感覚があった。

リフィエラによれば、この温泉には地層の奥深くから掬い上げた滋養豊かな土が混ぜられているという。

憔悴し生気を失った皮膚が、土に含まれる天然の薬効を切実に欲しているのを感じた。

リフィエラはジュランの満ち足りた様子を見て欣然とし、「好きなだけつかっていいわ。安息して」と言い残し、芳香の薫るロングドレスの長い裾をひらめかせて部屋を出ていった。

死の間際で鈍った思考が忘我の境をうつらうつらし、ジュランは高貴な美女を見送ったあと、重いまぶたを閉じた。

安泰を喜び、介抱し、慰労を与えてくれるリフィエラの真心はどこから来るのか――肝心な謎を解く気力が底を尽きていた。

問う気も、考える気もない。ジュランは生きる気力を失っていた。長年にわたる凄絶な葛藤と苦渋の日々――その倦怠感が、今の彼女のすべてだった。

しばしのあいだ香気に包まれ、甘美な療養に埋没していようと、放心したままリフィエラの善意に成り行きを委ねていた。

次回更新は5月29日(金)、7時の予定です。

 

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